オンライン教育コンテンツってどうやって利用するの?
さて、コラム「オンライン教育コンテンツってなぁに?」では、オンライン教育コンテンツ(以下:OER)とは、基本的に誰であっても無償で自由にアクセス・利用できる形式で提供されていることを紹介しました。
しかし、急に「誰でも自由に使っていいよ」と言われても……。
「見てみたいけど、どんなふうに使ったらいいのか、ピンと来ない」という方に向けて、このコラムでは、OERの具体的な使用方法を紹介します!
後半では、東大発のOER「UTokyo Online Education」へのアクセスのしかたなどを詳しく説明します!
(※OERとそれを取り巻く環境は社会情勢や技術とともに変容を続けており、特に、提供元の方針・プラットフォームやサービスの形態・Webサイトのビジュアルなどは、コラム執筆時と異なっている可能性があります。必要に応じて最新情報をご確認ください。)
OERを利用するメリットとは?
OERを取り入れた学習にはメリットがいっぱいです!
どんな点が優れているのでしょうか?
1. ほとんど無料!
OERの「O」は、「Open」の頭文字です。
その名の通り、オープンアクセスの資料は、一般にインターネット上で無償で提供されています。
閲覧する費用が掛かりません。
2. アクセスしやすい
インターネット環境さえ整っていれば、ご自身が持っているデバイス(パソコン・タブレット・スマートフォンなど)から検索して、気軽にアクセスすることができます。
皆さんは、スマートフォンでYouTubeの動画を見たり、パソコンでラジオ講座や教育テレビのアーカイブをご覧になったことはあるでしょうか。
OERの講義動画は、それらと同じような感覚で視聴できます。
3. 自分のペースで勉強できる
OERでの自主学習は、学校や塾などのカリキュラムが準備されている学習と違い、誰かから指図されて行うものではありません。
自分の興味関心に従って、自分のペースで自由に学習することができます。
学習スタイルは、あなたの自由。
しっかり机に向かい、まとまった時間を取って学習することもできます。
通勤・通学の移動時間や隙間時間に少しずつ進めることもできます。
どんな人が、どんな使い方をできる?
実際にOCW(Open Course Ware)やMOOC(Massive Open Online Courses)などには、どんな人に、どのような使い道があるか、具体的な例をいくつか挙げます。
ご自身のケースに当てはまる方法・実践できそうな方法などを取り入れてみてください。
受験・進学の参考に
受験生のみなさんは、進学先を検討するとき、どうしていらっしゃるでしょうか。
現在所属している学校・学習塾で進路指導を受けたり。
各大学が発行するパンフレットを参考にしたり。
または、オープンキャンパスに参加したりするのが一般的ですね。
実は、東大TV、OCWやMOOCを見るのもおすすめですよ!
もしも、みなさんが実際にオープンキャンパスに訪れるとしたら。
教室の人数制限もありますし、同じ時間帯にいくつもの模擬講義や説明会が開催されていますから、1日中キャンパスに滞在していても、「全ての」授業を見ることは難しいでしょう。
また、遠方に住んでいて、実際に行くのが難しいという人もいるでしょう。
そんなとき、東大TVのようなプラットフォームでオープンキャンパスの動画が公開されていたら、ぜひ、見逃した模擬講義や説明会を視聴しましょう!
また、OCW(Open Course Ware)では、その大学に所属している学生が実際に受けた講義が公開されています。
「どんな学問分野があるのかな」
「どんな先生がいるのかな」
「中学や高校の授業との雰囲気の違いは?」
「ついていけそうかな」
パンフレットやシラバスだけでは分からない教室の雰囲気をつかむことができるでしょう。
また、オープンキャンパスで授業を受けて「もっとこの先生の授業を受けてみたい」と思った先生や、「この分野について詳しく知りたい」と思った分野の動画を、OCWで探すのも良いでしょう。
マサチューセッツ工科大学(MIT)では、学生にアンケートを取ると、入学前にOCWを視聴して進路選択の参考にしたという人の割合がとても高かったようです。
履修・進路の検討に
OCWは、既にその大学に所属している学生にとっても役立つものです。
今後履修する授業や、進む分野を検討する材料として役立ちます。
大学によっては、入学時に決まった所属がなく、途中からそれぞれの専門分野に進むカリキュラムを取り入れている大学があります。
1・2年次のうちに興味のある分野や関心がある先生の授業を見て、希望する進学先の雰囲気をつかんでおくと良いでしょう。
また、大学院の授業が公開されている場合、大学院進学の際の検討材料になるでしょう。
実際に、当オフィスの学生サポーターで、「UTokyo OCWで見た講義動画を参考に、憧れの先生のゼミに入った」という人がいました。
予習・復習に
多くの場合、大学では同タイトルのコースや類似した内容のコースが、毎年度くり返し開講されています。
履修予定のコースを事前に確認しておいたり、過去に受けた講義を繰り返し視聴したり。
予習・復習に利用することで、より授業への理解が深まります。
生涯学習・趣味の学び・学びの補足に
現在、特定の教育機関に所属していない方(所属する機会がなかった人、あるいは既に卒業している人など)で、独自に学習を進めたいと思っている場合、OERは自分の好きなタイミングで簡単に始めることができるので、とてもおすすめです!
そして、すでに大学・大学院など特定の教育機関に所属している人にも。
履修している科目とは別に学びたいことがある場合、OERが役立つかもしれません。
学習している範囲の補強を行ったり、専攻と関係なく興味のある分野を開拓したり。
具体的には、次のような例が考えられます。
- 「履修はできないが興味がある」という講義の動画を視聴する。
- 自分の専門に隣接した分野のコースを試聴する。
- 文系で大学に入学したが、入学後に理系の専攻に進むことになったため、苦手な数学の補習として、数学の授業の動画を視聴する。
- 業務でWebページの作成をすることになったため、Webデザインのコースを視聴する。
- 時代小説を読むことが趣味なので、最新の日本史や国文学の講義を参考にして、より読書を楽しめるようにする。
実際に、UTokyo OCWで「だいふくちゃん通信」を書いた学生サポーターのみなさんから、
「まだまだ知らない講義がたくさんあって勉強になった」
「卒業前に取るチャンスがない講義を見る機会になって良かった」
といった声をいただいています。
語学学習に
母国語でない言語で開講されている講義の動画を、言語の学習の教材として役立てることができます。
例えば、英語で開講された授業の動画を視聴して、入試・検定試験の対策として、英語のリスニング力を強化するという使い方をしている人もいます。
自身の研究分野の授業を英語で理解して英語で論文を執筆したり、国際的な場で発表やディスカッションに参加したりする際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
レポート・プレゼン資料で引用できる
OERは、一定の条件下において再利用が可能です。
つまり、自分のレポートやプレゼン資料においてOERを引用することができます。
ご自身の授業の教材に
先生方は、ご自身の授業の教材の一部として利用することができます。
実際に、とある先生や学生さんから、下記のように使用されたという話を聞きました。
- 「OCWで、このコースのこの回の動画を見て、レポートを書いてください」という宿題を出す。
- OCWで、昨年開講したコースの動画を視聴する宿題を出し、次の回では動画の内容について議論をする、または詳しく説明を加えるといった反転授業(Flipped-Classroom)の形式を取る。
- 授業の中で動画を再生して一部を見せたり、画像やデータをスライド上で引用したりする。
教員が自分の教材をOERにする
ご自身の講義を公式に記録として残すことができます。
講義を振り返る材料としたり、自己紹介やキャリア紹介に業績として記載することができます。
OERを利用する際の注意点
OERというのは、必ずしも動画とセットというわけではありません。
元来、OCWはシラバス・講義資料・講義ノートなどを公開することを主目的として始まりました。
現在では、多くの場合、OCWの主要なコンテンツとして動画が付いていますが、資料のみが掲載されているページも多く存在します。
利用条件に注意しましょう
OERをご自身の教材やプレゼンテーションに引用したい人は、ご注意ください。
OERは、「パブリックドメイン」に属しているか、もしくは「オープンライセンス」のもとで公開されています。
オープンライセンスには、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが多く用いられます。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスにはいくつかの段階があり、その素材に付与されているライセンスの種類によって許される利用方法の範囲が異なります。
引用や再配布に際して、出典情報の記載など、個別によく確認しましょう。
☞パブリック・ドメイン, クリイティブコモンズとは?|utelecon
東京大学のOERを見てみよう!
さて、具体的なイメージがつかめたところで、実際に東京大学が提供するOERのWebサイトにアクセスしてみましょう!
この記事を見ながら、ぜひ、ご自分で実際にWebサイトを操作して、OERコンテンツの探索を楽しんでください。
UTokyo OCW
まずは、OCWについて詳しく紹介します。
下記のリンクをクリックするか、Web上で「UTokyo OCW」で検索してください。
UTokyo OCW:https://ocw.u-tokyo.ac.jp/
ヘッダーメニュー「講義を探す」から、絞り込みの方法を選ぶことができます。
進学先を検討している方には、「学部・大学院から探す/分野から探す」を選択することをおすすめします。
学部や専攻ごとに検索することができます。
オープンキャンパスで授業を受けたり、OCWで講義動画を見て、「もっとこの先生の授業を見てみたい」と思ったら、「講師から探す」を利用すると良いでしょう。
教員名をクリックすると、その先生が担当した授業の一覧が開きます。
ただし、お探しの教員名のボタンが存在しない場合、またはページ内検索でヒットしない場合は、UTokyo OCWでは未収録です。
ご了承ください。また、既に離任・退職している方も含まれていますので、進学先を検討する際にはよくご確認ください。
受講する授業の検討や予復習に役立てたい場合は、「コース一覧から探す」を見ましょう。
( 学期を通して開講される複数回の授業の連なりをコースと呼びます。)
トップページには、
- 多くアクセスがあった講義
- 新着講義
- 検索数の多いキーワード
などが表示されています。
それらのおすすめ情報から、ここ最近注目が高まっているホットなトピックを確認したり、自分の興味関心に合わせてランダムに視聴するのもよいでしょう。
また、「だいふくちゃん通信」は、東京大学・大学院の在学生や卒業生がおすすめする講義動画について、紹介・説明・感想などを綴ったコラム記事です。
各自の専門分野や興味関心、時事問題などから講義動画を選んでおり、記事そのものが読み応えある内容となっています。
ぜひ、ご一読ください。
東大TV
次に、東大TVを見てみましょう!
東大TVでは、授業ひとコマ分が収録されているUTokyo OCWに比べ、1本1本の動画が1時間以内の短いものがたくさんあります。
下記のリンクをクリックするか、Web上で「東大TV」で検索してください。
東大TV:https://tv.he.u-tokyo.ac.jp/
トップ画面から、分野や講師名などの分類を頼りに動画を検索する方法は、UTokyo OCWと全く同じです。
東大TVでは「講義」ではなく、講演会や模擬授業の1つ1つを「イベント」と呼んでいます。
「人気の動画」では、アクセス数の多い動画・最近アクセス数が多くなってきている動画などを掲載しています。
まずは、そこから興味深い動画を見てみるのも良いでしょう。
最近話題になっているトピックや社会問題などについて、疑問に思っていたことや、もっと詳しく知りたいと思っていたことの答えが、見つかるかもしれません。
東大TVには、小学生・中学生・高校生が楽しめるコンテンツが多く掲載されています。
例えば、2015年度に工学部が主催した「工学部 テクノサイエンスカフェ 第21回 宇宙へ飛び出そう!」では、元宇宙飛行士の方のお話を聞いたり、子どもたちがワークショップに参加したりする様子が収録されています。
「タグから探す」の「中高校生向け」「小学生向け」「オープンキャンパス」などのタグから、10代の方々でも楽しめる動画を見つけることができます。
「特集」では、「ぴぴりのイチ推し!」と題して、同じく学生サポーターがおすすめ講義を紹介する記事を掲載しています。
UTokyo MOOC
2023年現在、東京大学がコースを提供しているプラットフォームは、edXとCourseraの2箇所です。
- edXの東京大学のページ:https://www.edx.org/school/utokyox
- Courseraの東京大学のページ:https://www.coursera.org/utokyo
東京大学が現在どのようなコースを提供しているか知りたい場合は、下記ページをご覧いただくと、素早く一望することができます。
大規模オンライン公開講座(MOOC):https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/society/visit-lectures/mooc.html
トップページのメニューから、「講座を探す」をクリックします。
分野やプラットフォームから絞り込みをする機能があります。
ここでは、例として「教育」を選択して、検索してみました。
その結果、1件、「Coursera」で受講できる講座があることが分かります。
受講したい人は、「Courseraで受講する」をクリックしましょう。
edXやCourseraでは、コンテンツを閲覧するためには、事前に初期登録をする必要があります。
まずはアカウントを作成しましょう。
いずれのプラットフォームにおいても、下記のような特色があります。
- プラットフォームそのものへの登録(アカウント作成)は無料です。
- コースは英語で提供されています。
- 履修登録開始のボタンを押したからといって、必ずしも期間中に修了しなければならないわけではありません。課題を提出せずに資料としてコンテンツのみを閲覧するという活用も可能です。設定された開講期間後であっても、コンテンツが公開されている限りは閲覧可能です。
東京大学のコースに限定せず、様々なコースを検索したいという方。
MOOCには、edXとCousera以外にも様々なプラットフォームが存在します。
それぞれのプラットフォームのホーム画面から検索しましょう。
多くのプラットフォームは国際的なものであるため、英語でのコースが主流です。
日本語で提供されているコースをお探しの場合は、JMOOCなど、日本語に特化したプラットフォームをご覧になることをおすすめします。
JMOOCの詳細:https://www.jmooc.jp/about/
UTokyo OEで横断検索!
さてさて。
今まで紹介したような、東京大学が提供するOERのコンテンツを、サービスの垣根を超えて横断的に検索できるのが、このサイト「UTokyo Online Education」です。
UTokyo Online Education:https://oe.he.u-tokyo.ac.jp/
トップ画面からキーワードなどを元に絞り込み検索をすることができます。ぜひご活用ください。
〈執筆協力:中條 麟太郎・竹村 直也(学生サポーター)〉