【特別インタビュー企画】東アジア藝文書院の石井剛先生に聞いてみた! -2- わたしたちの「コロナ禍」と「ポスト・コロナ」を振り返る
はじめに
『UTokyo Open Course Ware』では、東京大学で開講された講義のスライド資料や動画を一般公開しており、日頃より多くの方からご視聴いただいています。
この度、2020〜2024年と連続して『学術フロンティア講義「30年後の世界へ」』シリーズを収録させてくださった東京大学東アジア藝文書院(ひがしあじあ-げいもんしょいん)の現院長、石井剛(いしいつよし)先生に、連携5年目を記念してインタビューいたしました。
前回『めんどくさそうだと思っていたOCWを5年間楽しく続けている理由』に引き続き、後半は、いわゆる「コロナ禍」の影響による収録形態の変化や、この5年間の講義の思い出などについて、より具体的に振り返ります。普段なかなか紹介する機会がない収録の裏側を、たくさんのお写真とともにお見せいたします。
このメンバーでお話しました(所属・職位等は2024年7月当時):
- 石井 剛 大学院総合文化研究科 教授(専門分野:中国哲学),東アジア藝文書院 院長
- 金子 亮大 東アジア藝文書院 教務補佐員,大学院総合文化研究科 大学院生
- 湯浅 肇 大学総合教育研究センター 学術専門職員,UTokyo Online Education スタッフ
- 三野 綾子 UTokyo Online Education スタッフ(2024年8月 退職)
- 加藤 なほ UTokyo Online Education スタッフ(2024年3月 退職)
後半のお話
2020年度、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、東京大学の授業は、基本的に全てがオンラインになりました。スタッフたちも在宅勤務を開始するにあたり、データの受け渡し方法や連絡手段の検討、自宅で動画編集するための環境整備など、技術的な問題に悩まされることに。『UTokyo Open Course Ware(以下:UTokyo OCW)』では、講義主催者の先生方や事務局の方に各自でオンラインの講義を録画していただき、そのデータを編集する形態をとりました。
やがて2022年度になると、『学術フロンティア講義「30年後の世界へ」』は教室での対面授業に戻り、OCWの収録はスタッフが現地に足を運ぶスタイルに。カメラやレコーダーも2年ぶりの出番です。
しかし、以前と異なるのは、同時にZoomによるリアルタイムのオンライン配信を兼ねた、いわゆる「ハイブリッド形式」で実施すること。何度もテスト撮影を繰り返し、配線図や使用機材の見直しを続けました。
幾度か教室の変更があり、その度に設備が変わるため、機材を組み直しました。音声トラブルや配信ミスを起こしつつも、できるだけ全ての参加者がインタラクションできる方法を探りました。例えば、オンラインの人が話す声が教室のスピーカーから流れるようにしたり、オンラインで登壇する先生が教室の受講者の様子を見ながら講義できるようにしたり工夫しました。
このように、2022年度から全く新しい取り組みに挑戦することになったため、既存の人員・やり方では太刀打ちできない場面も多々生じてきました。そこで、新たに、東アジア藝文書院(以下:EAA)から、授業の実施のみならず配信・収録まで垣根を超えて共に行うメンバーとして、教務スタッフとして働く金子亮大(かねこりょうたい)さんにご協力いただきました。金子さんは、大学院総合文化研究科の現役大学院生でもあります。
金子:石井先生がSNSに投稿した公募情報がたまたま回ってきて。募集要項を見たら……「呼ばれている! これは僕のことを言っている!」と思いました。
皆:(笑)
金子:今年で駒場に通って10年目になりますが、「そんな人がいたんだ」「そんな組織や取り組みがあったんだ」ということはしょっちゅうで、それが駒場の一番面白いところだと思います。面白そうに感じて応募しました。
石井:金子さんが来てくれたとき、スタッフみんなで本当に喜んだんですよ、「素晴らしい若者が来た」って。EAAの取り組みをどうやってオンラインで外に向けて開いていくかということが当時の大きな命題で、テクニカルなことができる人がほしかったんです。
湯浅:初めてお会いしたのって、2022年?
石井:ちょうど、わたしたちがハイブリッドでやろうとしていたときですよね。
金子:そうです。いろんな物事をハイブリッドでやるのはすごく難しいんだってことが、世の中のいろんなところで、ちょっとずつ分かってきて。春先に教室の下見をして、機材の構成を設計する段階が一番苦労しました。「ああでもない、こうでもない」と一緒に考えて。そもそも、当然のことですが、「授業そのものの実施に責任を持つのがEAAで、撮影・収録を担当するのがUTokyo OCW」という本来の役割分担があります。しかし、今回はハイブリッド配信の都合などもあり、お互いに相乗りでやったほうがうまくいく部分も見つかりました。その両者のリエゾンという立ち位置が、わたしのお仕事の一番大事なところだと思ってやらせていただいています。
湯浅:これほど一緒に二人三脚でやるのは初めての出来事だったので、インタビューの動機としては、こういう事例を残しておきたいというのもありました。
石井:楽しんでくれてるんですよね、この仕事を。金子さんがいてくれたから、一緒にやることが余計に楽しくなったし。
EAAにとっては、2019年に創設して「いよいよ始動」という矢先にパンデミックに見舞われた、大変な期間でしたね。
ところで、2020年の春、全国の大学がオンライン授業への移行を迫られて混乱している時期に、SNS上で石井先生の投稿がやや拡散され、「すごいことを言っている先生がいる」「かっこいい」と、ちょっとした話題を呼びました。当時はまだ、不安や不満などネガティブな意見が溢れている最中のことでした。
【オンライン授業に不安を感じる東大新入生の皆さんへ】その不安は杞憂ですので、まずはZoomから授業に出てみてください。(中略)わたしたちは、誰一人として取り残さないためのオンライン授業を構築しようと決意しています。(2020年03月27日)
石井:あのときはね、そんなにちゃんとできる自信はなかったんです。だけど、頑張ってやるしかない。先行して全学オンライン化を決定していた北京大学に電話して、やり方を聞いたりしました。それで、「全員がちゃんとオンラインで授業を受けられるようにしないと成功じゃない」と、3月からわりと明確に意識していました。やっぱり、わたしたちはマイノリティのことを考えなきゃいけないと思ったんです。
お言葉のとおり、遠隔の参加者への配慮を怠らず、丁寧に授業を進行する姿が印象的だった石井先生ですが、一方で、「キャンパスに集うことの大切さ」について繰り返し語っていますね。
石井:わたしは、オンライン授業は「緊急避難先」で、大学はキャンパスを共有することによって初めて大学たりえると、今でも思っています。想定していた以上にオンラインの期間が長くなりすぎました。本当はイヤなんです、スクリーンに向かって話しかけるのは。
金子:オンライン授業開始初期に、「まるで宇宙に向かって話しかけているようだ」「無人島で瓶に手紙を詰めて大海原に向かって送り続けているような感じだ」とおっしゃった先生がいて、卓抜な比喩だなと思いました。
石井:教室では、学生さんが反応してくれているか、面白がっているか、表情を見ながら言葉を選んでいますからね。オンラインであっても、中国との会議に出ると、わりと皆さん平気でカメラをオンにするんですよ。そうすると急に臨場感が増すことはあります。だから、「どちらか」というふうに二元論的に考えちゃうと良くなくて、わたしたちは、「オンラインだからこそできたこと」をちゃんと評価して、対面に戻った今も続ける必要があります。オンライン・ツールを得たことは、大学にとって間違いなくいいことですから。2020年の秋学期に、IARU(国際研究型大学連合)で国際授業をやったんです。当時の議長大学が東大で、北京大学と一緒に、複数国の学生が同時に受講できるコースを開講しました。国際的な授業には、オンライン・ツールってすごくいいなと思いました。でも、地球の反対側の人たちは時差のせいでだんだんと脱落していってしまいました。時差は、今のところ、技術的に解決できないことなのかもしれません。
加藤:コロナ禍の当時は、うち(大学総合教育研究センター)の事業なども含め、オンライン授業をできるだけきちんと本質的なものに近付けようという試みがなされていて。わたしと金子さんは、偶然なのですが、過去に学内のオンライン系をサポートする趣旨の業務でもご一緒していました。その時期にはオンライン・ツール上で、顔を見たことがない、名前とアイコンしか知らない人たちと仲良く働いていました。
石井:実は、わたしも現在研究活動で一番仲良くしてる人たちは、オンライン時代に知り合った人たちなんです。去年から実際に国際的な行き来が可能になってきましたが、オンラインで出会った人たちと初めて対面で会った時はとても嬉しかったですねえ。オンラインだけでは味わえないもので、会ったから感動するんですけど。
金子:何らかの事情でその場から離れられない人にオンラインで留学するチャンスがあるのはいいことですが、「アメリカの大学の授業をオンラインで受けられるから、君はアメリカに行かなくてもいいよね」とか、「オンラインコンテンツがあるから授業はいらないよね」というふうになってはいけなくて。選択肢が増えたと考えるべきだというのは間違いないですよね。いろんな選択肢を全部保証するのは、やる側にとってはすごく大変なことですけれども。
石井:オンラインじゃなければ学問にアクセスできない人もいますから、可能な限りアクセスの方法があった方がいいんじゃないかと思います。ただ、それらをどういう場面でどういう意図で使うのかということを、使う人が明確に意識していないと、せっかくのツールも活かせません。
金子:技術・ツール・メディアなどが、そのコンテンツの中身を規定することもありますね。一体不可分なのだと思います。
石井:わたしたちの講義の場合は本当に不可分で、ハイブリッド配信じゃなければいけない。産学連携をしているダイキン工業株式会社の方々にもリカレント教育として講義にご参加いただいていますが、全国の社員が参加できる方法は、やはりオンラインですから。ときどき、海外のダイキンの方も参加してくれているはずです。
教員として、授業の実施形態やOCWの収録形態の変化は、コースそのものにどのような影響を与えたと感じていますか?
石井:……あんまり何も感じていないから続けていられるのかもしれませんね。個人的なことですが、基本的に、皆さんにいてもらうのが、ただ楽しいんです。それしかないので、あんまり振り返ったことないんです、実は。良くないですね、立派じゃないですね(笑) 楽しいことをやりたいんです、わたしは。
加藤:だから、とりあえず全部やってみた?
石井:ええ。で、実際、ホラ、やってくれる——「やりたい」って言ってくれる人たちがいたわけですし。楽しいですもんね、端的に。
石井:海外の大学との共同講義や大学に来られない人への配信のように地理的に離れているということとは別に、オンラインだからこそ上手くいった授業というのは、やっぱり明確にあります。それは、2022年度の青山和佳(あおやまわか)先生の回です。あれは、オンラインでなければできませんでした。というのは、青山先生ご自身が非常に深刻なPTSDを抱えていて、それを「自伝的物語」というタイトルで話してくださったんです。ご自身の心の安定を保たないと話せないことなので、事前にビデオを録画なさって、質疑応答のときだけオンラインで学生さんたちの質問に答えてもらいました。
せっかくなので、スタッフの皆さんにも思い出に残っている回や印象深い回についてお話してもらいましょう。
湯浅:特に印象に残ってるのは、2020年度の國分功一郎(こくぶんこういちろう)先生と熊谷晋一郎(くまがやしんいちろう)先生の回。自閉症や依存症がテーマの講義で、OCW掲載時にはカットした部分ですが、質疑応答のときに学生さんが、人生相談じゃないけど——
石井:あぁ、そうそうそう。
湯浅:本当に人との繋がりが断たれていた時期だったので、先生が「仲間だよ」っていうふうに言ってくれていて、良かったなぁって。
石井:ただ同時に、「その問いには答えられない」ということも率直に言っていて、応答のしかたが非常に巧みでしたよね。國分さんと熊谷さんのパーソナリティーが大きかったと思います。偶然、國分さんの考えはわたしたちEAAが考えていたことと一致していました。「ひとりの教員が教室を支配するのではなく、学生には、教員同士が話しているところに参加してもらうのがリベラル・アーツとしてあるべき姿だろう」と。依頼した際、すぐに「熊谷さんと一緒にやります」と言ってくれたんです。
三野:わたしは人文系の内容に興味があるので、2022年度が面白かったです。自分が収録に関わった2022年度から2024年度を通して一番印象に残っているのは、中島隆博(なかじまたかひろ)先生です。熱いパッションが感じられるので。すごくファンになりました。
石井:うんうん。
湯浅:中島隆博先生の世界哲学の授業は、再生回数も多くて、皆さん視聴されています。
湯浅:1コースごとの再生回数は、大体、年間で9,000の後半ぐらいです。
石井:そんなにあるんですか。へぇ、すごい。
湯浅:わたしが感じた小さな影響としては、だいふくちゃん通信・ぴぴりのイチ推し!*の学生ライターさんの中に、「前年度に学術フロンティア講義を受講していたからOCWの存在を知っていた」という方がいました。
石井:そうですか。
*だいふくちゃん通信・ぴぴりのイチ推し!:UTokyo OCWと東大TVの講義動画紹介コラムのページです。東京大学の学生サポーター・卒業生・UTokyo Online Educationスタッフを中心に持ち回りで執筆しています。
金子:僕は、いかにも鼻息の荒い1年生が鼻息の荒い質問をしてくれるのを見ると、ニコニコしますね。最初の年は特に、1年生で質問している人が多かった印象があって、それを見てニコニコしていました。
加藤:おじいちゃん目線(笑) 何年か通して受講して、沢山質問している学生さんがいましたね。毎年内容が変わるから固定ファンが付くのかな。
石井:4年間履修してくれた人もいるし。
三野:思い出深い。毎年テーマを作るのは大変そう。
石井:OCWに出していないものも含めて、2019年から2021年までの最初の3回は「EAAが何を考えているか」をテーマ化していました。2022年度からは「EAAが誰と一緒に仕事をするか」によって決めるようになりました。来年度も社会連携を意識しながら作るつもりでいます。
湯浅:こうして全体を振り返ると、毎年ひとつのテーマに沿いながら、本当に縦横無尽に話している。「哲学」から「食」「空気」といった身近なところまで。EAAだからこそできるっていうのがいいな、って。
さて、楽しいことが大好きな石井先生、今後チャレンジしたいことは何ですか?
石井:もう既に始めていますが、EAAがやっていることを世界的なアソシエーションにすることです。地球的危機に対して学問のレベルで真剣に考えている人たちが、世界中に、同時多発的にいっぱいいます。例えば「ロシアとウクライナ」「イスラエルとパレスチナ」とか、対立構造ばかり見えてしまうけど、両者の中に似たようなことを考えてる人たちがいるはずなんです、個人や集団として。世界が決裂・分裂しそうなときにも、その次の「よりよい世界」のことを考えている人たちがいる。それを、なるべく広くネットワーク化して、ひとつのダイナミックなアソシエーションとして機能させたいんです。それで、ときどき意見交換して、学問的責任の中で、「解決」は無理かもしれないけど、一緒に知恵を絞るんです。
加藤:国連や政府が抱えるシンクタンクなどの公式な動きとは違うところで、別途、勝手にお友だちになるという意味ですか?
石井:両方です。両方必要だと思うんですよ。わたしたちのような組織や個人、つまり点と点がそれぞれお友だちになって線で結ばれていく横の繋がりがありつつ、その個々の点は、たまたま国連などと一緒にプロジェクトをやっているといった縦の繋がりを持っているかもしれません。実際、既にOECDや国連に対するアプローチや知見のフィードバックの試みもあります。あちこちで横と縦にネットワークが広がって、思いが伝播していく——そうじゃないと、世の中、動いていきませんから。「思い」といっても、必ずしもみんなが全く同じ思想ではないかもしれない。だけど、「希望」はみんな持っているに違いないんですよね。
加藤:「世界をよりよくしよう」ぐらいの統一感ということですか?
石井:何が本当に「よい」のかは分からないですからね。あちこちに「希望の種」があるって知りたいし、それを使って、また別のところに「希望の種」を分けられるじゃないですか。
石井:この講義の先生方も、地に足の付いた研究をしていて、それぞれの現場があるからこそ成り立っていることが分かりましたよね。リベラル・アーツって、体が伴ってないとダメなんですよ。福永真弓(ふくながまゆみ)先生は、講義の中で「地球にまみれる」と表現していました。ひとりひとりがそれぞれの現場の土にまみれる——ものすごく生活に密着していることなんです。例えば、北京大学の呂植(ろしょく)先生はチベットの土にまみれる人で、チベットや四川省のパンダの保護区に住んでいる人たちのマインドを、30年かけて「自然保護に意味がある」というように変えていった。そういう人が存在するという事実を知ることは、わたしたちが自分たちの土に戻る(現場に立ち返る)ときに、とても大事なことではないでしょうか。そうやって地球にまみれる人たちが世界中にいっぱいいて、彼らがひとつの場を共有できるとすれば、それは学問の場になりますし、別々の現場同士を繋ぐことこそ、まさに学者の役割で、政治には難しいことなのではないかと思います。そういういろんな泥臭い人たちがあちこちから集まって来ているのが「大学」で、その場を確保していくのが駒場キャンパスの役割だと思うんですよね。
加藤:そのような力を持つ組織や機関に所属していない、いわゆる一般の個人が「賛同するよ」っていう場合は、どのように応援できるんですか?
石井:それは簡単です。OCWを見てもらえばいいんですよ。
湯浅・三野・金子:おぉ〜!(笑)
加藤:いいことを言いましたね。
石井:そのためにやってるんですから。OCWも書籍も、その方法のひとつですよね。
湯浅:本当に、EAAがテーマにしているようなことは、ますます重要度が増していますよね! コースが始まった頃から比べて、やっぱり、危機というのが本当に迫って来てるなぁという感じがする。日々暑くなってるし。いろいろな戦争も……
石井:人々も熱くなってね。
湯浅:そういうふうに、思います。
最後は、先生ではなく、湯浅さんが締めくくってくれました。
終わりに
先生の夢は、大学が教育資源を通じて世界中に「知」の繋がりと再生産を促す Open Educational Resourcesの考え方とリンクするところがあり、UTokyo OCWがEAAと長らく手を取り合うことができた理由の一端を見つけられたように感じました。「知」の共同体のようなものが持つ広く大きな繋がりの中には、もちろん、わたしたちのコンテンツを視聴してくださる皆さまもいらっしゃることでしょう。
そして、新たにコンテンツをご提供くださる先生方のことも、心からお待ちしております。(お問い合わせ方法につきましては、こちらをご参照くださいませ。)
〈編集:加藤 なほ,校正校閲:中谷 静乃〉
その他 学術フロンティア講義「30年後の世界へ」に携わった UTokyo OCWスタッフ(2024年度に在職中の職員のみ記載,50音順):
佐藤 芙美・蒋 妍・田中 かおり・中谷 静乃・古田 紫乃・村松 陽子・山本 直美
おまけとして、スタッフの思い出やメッセージを紹介いたします:
- スタッフとして聴講させていただきましたが、先生方の声の温度やそこに乗せられてくる思いや情熱が伝わってくるような気がして、毎回、心から楽しみにしていました。普段、著作権確認でパソコンの画面上でしか伝わってこないものが、liveだと心に沁みる感覚があります。そうした先生方のご講義を、まるで教室で講義を受けているかのような感覚で全世界に届けることができるんだということに、感動とやりがいを感じます。特に印象に残っているのは、羽藤先生の『復興の未来』、岩川先生の『パンデミックを銘記する』の回です。
- 溝口勝先生『レジリエンスと地域の復興』で、応援団長がエールを送ってくださったのがとても印象的でした。また、どの先生もOCW収録に関する一連の作業に丁寧にご対応いただき、感謝しています。
- この授業は、基本的にどのご講義も、学生だけでなく一般の方が聞いても興味深いお話が多いように思います。自分は、撮影業務に集中しているため、その場ではそれほど内容が頭に入ってくることはありませんでしたが、福永真弓先生の『藻と人間』は先生の表現力が素晴らしかったこともあり、お話に引き込まれました。結果、私はプライベートの会食で幾度となく「藻」の話を友人たちに披露しており、最近ではこすり倒して、若干、話が上手くなってきています。
- OCWの大ファンだという学生さんと話ができたことが良かったです。
- わたしが大学生の頃受けていた講義は、ここまで講師の専門性に大きな幅があるものはなかったように思い出されます。同じ「30年後の世界へ」という命題でも毎年毛色が違うこと、「共生」や「空気」、「希望」といったキーワードにそれぞれの講師が自分の専門分野から切り込んでいくことに学問の多様性や可能性を感じ、また、それを持ち寄ってさまざまな側面からみんなで未来を考えていくことの包含する発展性のようなものを、強く感じました。今年の講義シリーズでは、前半によく取り扱われた復興に関する講義が、どれも心に残りました。自分の視野の狭さを思い知るとともに、また、自分の知らなかった復興への多様な取り組みを知ることで状況が着実に前進しているという安心感、テーマにある希望のようなものが胸に響きました。この講義を多くの人に聞いてもらいたいと、この事業の役割について初心に立ち返る思いがしています。
- 私は、溝口勝教授の責任感と行動力に深く感銘を受けました。日本の学者の方々と接する機会がある中で、溝口先生の姿勢は特に印象的でした。先生は被災地に対する強い責任感を持ち、小さなことでも率先して行動されています。東京大学の教授という立場でありながら現場に寄り添う姿勢に感動すると同時に、その献身的な取り組みに深い敬意を表します。石井教授のご活動にも大変感銘を受けています。以前、私も先生方にご講義をお願いするイベントを企画したことがあり、その際の調整の難しさを経験しました。今回の撮影を含むイベントでは、さらに多くの行政手続きや調整が必要だったことでしょう。それにも関わらず、石井教授が長年にわたってこのような活動を継続されてきたことに、心から敬服いたします。両教授の献身的な姿勢と、社会貢献への揺るぎない意志に深く感謝すると同時に、大きな励みとなっています。このような素晴らしい先生方と共に活動できることを、心から光栄に思います。
- いつも笑顔で話しかけてくださる働き者のEAAスタッフの方々・野澤先生、既に退職されたUTokyo OCW教職員の方々、東京大学出版会の方に、この場をお借りしてお礼と拍手を。皆さまあってこそでした。全ての回がおすすめなので……直感でピンと来たものから、気ままにご自身のペースで、お散歩のように訪ね遊んでみてください!(加藤)