だいふくちゃん通信
はじめに
 
『UTokyo Open Course Ware』では、東京大学で開講された講義のスライド資料や動画を一般公開しており、日頃より多くの方からご視聴いただいています。
この度、2020〜2024年と連続して『学術フロンティア講義「30年後の世界へ」』シリーズを収録させてくださった東京大学東アジア藝文書院(ひがしあじあ-げいもんしょいん)の現院長、石井剛(いしいつよし)先生に、連携5年目を記念してインタビューいたしました。
 
石井剛先生とUTokyo OCWのマスコットキャラクターだいふくちゃん
 
前回『めんどくさそうだと思っていたOCWを5年間楽しく続けている理由』に引き続き、後半は、いわゆる「コロナ禍」の影響による収録形態の変化や、この5年間の講義の思い出などについて、より具体的に振り返ります。普段なかなか紹介する機会がない収録の裏側を、たくさんのお写真とともにお見せいたします。
 
このメンバーでお話しました(所属・職位等は2024年7月当時):
石井 剛  大学院総合文化研究科 教授(専門分野:中国哲学),東アジア藝文書院 院長
金子 亮大 東アジア藝文書院 教務補佐員,大学院総合文化研究科 大学院生
湯浅 肇  大学総合教育研究センター 学術専門職員,UTokyo Online Education スタッフ
三野 綾子 UTokyo Online Education スタッフ(2024年8月 退職)
加藤 なほ UTokyo Online Education スタッフ(2024年3月 退職)
 
左から加藤・金子・石井・湯浅・三野(2024年7月19日 駒場キャンパスにて)
 
後半のお話
 
2020年度、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、東京大学の授業は、基本的に全てがオンラインになりました。スタッフたちも在宅勤務を開始するにあたり、データの受け渡し方法や連絡手段の検討、自宅で動画編集するための環境整備など、技術的な問題に悩まされることに。『UTokyo Open Course Ware(以下:UTokyo OCW)』では、講義主催者の先生方や事務局の方に各自でオンラインの講義を録画していただき、そのデータを編集する形態をとりました。
 
オンラインで実施された講義の様子(2021年度 第4回より)
 
やがて2022年度になると、『学術フロンティア講義「30年後の世界へ」』は教室での対面授業に戻り、OCWの収録はスタッフが現地に足を運ぶスタイルに。カメラやレコーダーも2年ぶりの出番です。
 
2022〜2024年度の撮影隊の様子
 
しかし、以前と異なるのは、同時にZoomによるリアルタイムのオンライン配信を兼ねた、いわゆる「ハイブリッド形式」で実施すること。何度もテスト撮影を繰り返し、配線図や使用機材の見直しを続けました。
 
教室の内外から登壇する講師に扮しての音声テストと配線図の試作
 
幾度か教室の変更があり、その度に設備が変わるため、機材を組み直しました。音声トラブルや配信ミスを起こしつつも、できるだけ全ての参加者がインタラクションできる方法を探りました。例えば、オンラインの人が話す声が教室のスピーカーから流れるようにしたり、オンラインで登壇する先生が教室の受講者の様子を見ながら講義できるようにしたり工夫しました。
 
ハイブリッド授業の様子(2023年度 第2回より)
 
 
ゲスト講師が遠隔から登壇する講義の様子(2023年度 第11回より)
 
このように、2022年度から全く新しい取り組みに挑戦することになったため、既存の人員・やり方では太刀打ちできない場面も多々生じてきました。そこで、新たに、東アジア藝文書院(以下:EAA)から、授業の実施のみならず配信・収録まで垣根を超えて共に行うメンバーとして、教務スタッフとして働く金子亮大(かねこりょうたい)さんにご協力いただきました。金子さんは、大学院総合文化研究科の現役大学院生でもあります。
金子:石井先生がSNSに投稿した公募情報がたまたま回ってきて。募集要項を見たら……「呼ばれている! これは僕のことを言っている!」と思いました。
皆:(笑)
金子:今年で駒場に通って10年目になりますが、「そんな人がいたんだ」「そんな組織や取り組みがあったんだ」ということはしょっちゅうで、それが駒場の一番面白いところだと思います。面白そうに感じて応募しました。
 
  
石井:金子さんが来てくれたとき、スタッフみんなで本当に喜んだんですよ、「素晴らしい若者が来た」って。EAAの取り組みをどうやってオンラインで外に向けて開いていくかということが当時の大きな命題で、テクニカルなことができる人がほしかったんです。
湯浅:初めてお会いしたのって、2022年?
石井:ちょうど、わたしたちがハイブリッドでやろうとしていたときですよね。
金子:そうです。いろんな物事をハイブリッドでやるのはすごく難しいんだってことが、世の中のいろんなところで、ちょっとずつ分かってきて。春先に教室の下見をして、機材の構成を設計する段階が一番苦労しました。「ああでもない、こうでもない」と一緒に考えて。そもそも、当然のことですが、「授業そのものの実施に責任を持つのがEAAで、撮影・収録を担当するのがUTokyo OCW」という本来の役割分担があります。しかし、今回はハイブリッド配信の都合などもあり、お互いに相乗りでやったほうがうまくいく部分も見つかりました。その両者のリエゾンという立ち位置が、わたしのお仕事の一番大事なところだと思ってやらせていただいています。
湯浅:これほど一緒に二人三脚でやるのは初めての出来事だったので、インタビューの動機としては、こういう事例を残しておきたいというのもありました。
石井:楽しんでくれてるんですよね、この仕事を。金子さんがいてくれたから、一緒にやることが余計に楽しくなったし。
 
大活躍の金子亮大さん
 
EAAにとっては、2019年に創設して「いよいよ始動」という矢先にパンデミックに見舞われた、大変な期間でしたね。ところで、2020年の春、全国の大学がオンライン授業への移行を迫られて混乱している時期に、SNS上で石井先生の投稿がやや拡散され、「すごいことを言っている先生がいる」「かっこいい」と、ちょっとした話題を呼びました。当時はまだ、不安や不満などネガティブな意見が溢れている最中のことでした。
【オンライン授業に不安を感じる東大新入生の皆さんへ】その不安は杞憂ですので、まずはZoomから授業に出てみてください。(中略)わたしたちは、誰一人として取り残さないためのオンライン授業を構築しようと決意しています。(2020年03月27日)
石井:あのときはね、そんなにちゃんとできる自信はなかったんです。だけど、頑張ってやるしかない。先行して全学オンライン化を決定していた北京大学に電話して、やり方を聞いたりしました。それで、「全員がちゃんとオンラインで授業を受けられるようにしないと成功じゃない」と、3月からわりと明確に意識していました。やっぱり、わたしたちはマイノリティのことを考えなきゃいけないと思ったんです。
 
お言葉のとおり、遠隔の参加者への配慮を怠らず、丁寧に授業を進行する姿が印象的だった石井先生ですが、一方で、「キャンパスに集うことの大切さ」について繰り返し語っていますね。
 
キャンパスでの授業の再開を喜ぶ2022年度(2022年度 第13回より)
 
石井:わたしは、オンライン授業は「緊急避難先」で、大学はキャンパスを共有することによって初めて大学たりえると、今でも思っています。想定していた以上にオンラインの期間が長くなりすぎました。本当はイヤなんです、スクリーンに向かって話しかけるのは。
金子:オンライン授業開始初期に、「まるで宇宙に向かって話しかけているようだ」「無人島で瓶に手紙を詰めて大海原に向かって送り続けているような感じだ」とおっしゃった先生がいて、卓抜な比喩だなと思いました。
石井:教室では、学生さんが反応してくれているか、面白がっているか、表情を見ながら言葉を選んでいますからね。オンラインであっても、中国との会議に出ると、わりと皆さん平気でカメラをオンにするんですよ。そうすると急に臨場感が増すことはあります。だから、「どちらか」というふうに二元論的に考えちゃうと良くなくて、わたしたちは、「オンラインだからこそできたこと」をちゃんと評価して、対面に戻った今も続ける必要があります。オンライン・ツールを得たことは、大学にとって間違いなくいいことですから。2020年の秋学期に、IARU(国際研究型大学連合)で国際授業をやったんです。当時の議長大学が東大で、北京大学と一緒に、複数国の学生が同時に受講できるコースを開講しました。国際的な授業には、オンライン・ツールってすごくいいなと思いました。でも、地球の反対側の人たちは時差のせいでだんだんと脱落していってしまいました。時差は、今のところ、技術的に解決できないことなのかもしれません。
加藤:コロナ禍の当時は、うち(大学総合教育研究センター)の事業なども含め、オンライン授業をできるだけきちんと本質的なものに近付けようという試みがなされていて。わたしと金子さんは、偶然なのですが、過去に学内のオンライン系をサポートする趣旨の業務でもご一緒していました。その時期にはオンライン・ツール上で、顔を見たことがない、名前とアイコンしか知らない人たちと仲良く働いていました。
石井:実は、わたしも現在研究活動で一番仲良くしてる人たちは、オンライン時代に知り合った人たちなんです。去年から実際に国際的な行き来が可能になってきましたが、オンラインで出会った人たちと初めて対面で会った時はとても嬉しかったですねえ。オンラインだけでは味わえないもので、会ったから感動するんですけど。
 
  
金子:何らかの事情でその場から離れられない人にオンラインで留学するチャンスがあるのはいいことですが、「アメリカの大学の授業をオンラインで受けられるから、君はアメリカに行かなくてもいいよね」とか、「オンラインコンテンツがあるから授業はいらないよね」というふうになってはいけなくて。選択肢が増えたと考えるべきだというのは間違いないですよね。いろんな選択肢を全部保証するのは、やる側にとってはすごく大変なことですけれども。
石井:オンラインじゃなければ学問にアクセスできない人もいますから、可能な限りアクセスの方法があった方がいいんじゃないかと思います。ただ、それらをどういう場面でどういう意図で使うのかということを、使う人が明確に意識していないと、せっかくのツールも活かせません。
金子:技術・ツール・メディアなどが、そのコンテンツの中身を規定することもありますね。一体不可分なのだと思います。
石井:わたしたちの講義の場合は本当に不可分で、ハイブリッド配信じゃなければいけない。産学連携をしているダイキン工業株式会社の方々にもリカレント教育として講義にご参加いただいていますが、全国の社員が参加できる方法は、やはりオンラインですから。ときどき、海外のダイキンの方も参加してくれているはずです。
 
2023年度「空気の価値化」ではダイキンの方にも講義をしていただきました(2023年度 第6回より)
 
教員として、授業の実施形態やOCWの収録形態の変化は、コースそのものにどのような影響を与えたと感じていますか?
石井:……あんまり何も感じていないから続けていられるのかもしれませんね。個人的なことですが、基本的に、皆さんにいてもらうのが、ただ楽しいんです。それしかないので、あんまり振り返ったことないんです、実は。良くないですね、立派じゃないですね(笑) 楽しいことをやりたいんです、わたしは。
加藤:だから、とりあえず全部やってみた?
石井:ええ。で、実際、ホラ、やってくれる——「やりたい」って言ってくれる人たちがいたわけですし。楽しいですもんね、端的に。
 
たしかに楽しそうですね
 
石井:海外の大学との共同講義や大学に来られない人への配信のように地理的に離れているということとは別に、オンラインだからこそ上手くいった授業というのは、やっぱり明確にあります。それは、2022年度の青山和佳(あおやまわか)先生の回です。あれは、オンラインでなければできませんでした。というのは、青山先生ご自身が非常に深刻なPTSDを抱えていて、それを「自伝的物語」というタイトルで話してくださったんです。ご自身の心の安定を保たないと話せないことなので、事前にビデオを録画なさって、質疑応答のときだけオンラインで学生さんたちの質問に答えてもらいました。
 
青山和佳先生の講義の様子(2022年度 第2回より)
 
せっかくなので、スタッフの皆さんにも思い出に残っている回や印象深い回についてお話してもらいましょう。
湯浅:特に印象に残ってるのは、2020年度の國分功一郎(こくぶんこういちろう)先生と熊谷晋一郎(くまがやしんいちろう)先生の回。自閉症や依存症がテーマの講義で、OCW掲載時にはカットした部分ですが、質疑応答のときに学生さんが、人生相談じゃないけど——
石井:あぁ、そうそうそう。
湯浅:本当に人との繋がりが断たれていた時期だったので、先生が「仲間だよ」っていうふうに言ってくれていて、良かったなぁって。
石井:ただ同時に、「その問いには答えられない」ということも率直に言っていて、応答のしかたが非常に巧みでしたよね。國分さんと熊谷さんのパーソナリティーが大きかったと思います。偶然、國分さんの考えはわたしたちEAAが考えていたことと一致していました。「ひとりの教員が教室を支配するのではなく、学生には、教員同士が話しているところに参加してもらうのがリベラル・アーツとしてあるべき姿だろう」と。依頼した際、すぐに「熊谷さんと一緒にやります」と言ってくれたんです。
 
國分功一郎先生・熊谷晋一郎先生の講義(2020年度 第13回より)
 
三野:わたしは人文系の内容に興味があるので、2022年度が面白かったです。自分が収録に関わった2022年度から2024年度を通して一番印象に残っているのは、中島隆博(なかじまたかひろ)先生です。熱いパッションが感じられるので。すごくファンになりました。
石井:うんうん。
湯浅:中島隆博先生の世界哲学の授業は、再生回数も多くて、皆さん視聴されています。
 
中島隆博先生の講義の様子(2020年度 第4回より)
 
湯浅:1コースごとの再生回数は、大体、年間で9,000の後半ぐらいです。
石井:そんなにあるんですか。へぇ、すごい。
湯浅:わたしが感じた小さな影響としては、だいふくちゃん通信・ぴぴりのイチ推し!*の学生ライターさんの中に、「前年度に学術フロンティア講義を受講していたからOCWの存在を知っていた」という方がいました。
石井:そうですか。
*だいふくちゃん通信・ぴぴりのイチ推し!:UTokyo OCWと東大TVの講義動画紹介コラムのページです。東京大学の学生サポーター・卒業生・UTokyo Online Educationスタッフを中心に持ち回りで執筆しています。
金子:僕は、いかにも鼻息の荒い1年生が鼻息の荒い質問をしてくれるのを見ると、ニコニコしますね。最初の年は特に、1年生で質問している人が多かった印象があって、それを見てニコニコしていました。
加藤:おじいちゃん目線(笑) 何年か通して受講して、沢山質問している学生さんがいましたね。毎年内容が変わるから固定ファンが付くのかな。
石井:4年間履修してくれた人もいるし。
三野:思い出深い。毎年テーマを作るのは大変そう。
石井:OCWに出していないものも含めて、2019年から2021年までの最初の3回は「EAAが何を考えているか」をテーマ化していました。2022年度からは「EAAが誰と一緒に仕事をするか」によって決めるようになりました。来年度も社会連携を意識しながら作るつもりでいます。
湯浅:こうして全体を振り返ると、毎年ひとつのテーマに沿いながら、本当に縦横無尽に話している。「哲学」から「食」「空気」といった身近なところまで。EAAだからこそできるっていうのがいいな、って。
 
さて、楽しいことが大好きな石井先生、今後チャレンジしたいことは何ですか?
石井:もう既に始めていますが、EAAがやっていることを世界的なアソシエーションにすることです。地球的危機に対して学問のレベルで真剣に考えている人たちが、世界中に、同時多発的にいっぱいいます。例えば「ロシアとウクライナ」「イスラエルとパレスチナ」とか、対立構造ばかり見えてしまうけど、両者の中に似たようなことを考えてる人たちがいるはずなんです、個人や集団として。世界が決裂・分裂しそうなときにも、その次の「よりよい世界」のことを考えている人たちがいる。それを、なるべく広くネットワーク化して、ひとつのダイナミックなアソシエーションとして機能させたいんです。それで、ときどき意見交換して、学問的責任の中で、「解決」は無理かもしれないけど、一緒に知恵を絞るんです。
加藤:国連や政府が抱えるシンクタンクなどの公式な動きとは違うところで、別途、勝手にお友だちになるという意味ですか?
石井:両方です。両方必要だと思うんですよ。わたしたちのような組織や個人、つまり点と点がそれぞれお友だちになって線で結ばれていく横の繋がりがありつつ、その個々の点は、たまたま国連などと一緒にプロジェクトをやっているといった縦の繋がりを持っているかもしれません。実際、既にOECDや国連に対するアプローチや知見のフィードバックの試みもあります。あちこちで横と縦にネットワークが広がって、思いが伝播していく——そうじゃないと、世の中、動いていきませんから。「思い」といっても、必ずしもみんなが全く同じ思想ではないかもしれない。だけど、「希望」はみんな持っているに違いないんですよね。
加藤:「世界をよりよくしよう」ぐらいの統一感ということですか?
石井:何が本当に「よい」のかは分からないですからね。あちこちに「希望の種」があるって知りたいし、それを使って、また別のところに「希望の種」を分けられるじゃないですか。
 
  
石井:この講義の先生方も、地に足の付いた研究をしていて、それぞれの現場があるからこそ成り立っていることが分かりましたよね。リベラル・アーツって、体が伴ってないとダメなんですよ。福永真弓(ふくながまゆみ)先生は、講義の中で「地球にまみれる」と表現していました。ひとりひとりがそれぞれの現場の土にまみれる——ものすごく生活に密着していることなんです。例えば、北京大学の呂植(ろしょく)先生はチベットの土にまみれる人で、チベットや四川省のパンダの保護区に住んでいる人たちのマインドを、30年かけて「自然保護に意味がある」というように変えていった。そういう人が存在するという事実を知ることは、わたしたちが自分たちの土に戻る(現場に立ち返る)ときに、とても大事なことではないでしょうか。そうやって地球にまみれる人たちが世界中にいっぱいいて、彼らがひとつの場を共有できるとすれば、それは学問の場になりますし、別々の現場同士を繋ぐことこそ、まさに学者の役割で、政治には難しいことなのではないかと思います。そういういろんな泥臭い人たちがあちこちから集まって来ているのが「大学」で、その場を確保していくのが駒場キャンパスの役割だと思うんですよね。
加藤:そのような力を持つ組織や機関に所属していない、いわゆる一般の個人が「賛同するよ」っていう場合は、どのように応援できるんですか?
石井:それは簡単です。OCWを見てもらえばいいんですよ。
湯浅・三野・金子:おぉ〜!(笑)
加藤:いいことを言いましたね。
石井:そのためにやってるんですから。OCWも書籍も、その方法のひとつですよね。
 
毎回コースの最後の締めくくりは石井先生の講義(2023年度 第13回より)
 
湯浅:本当に、EAAがテーマにしているようなことは、ますます重要度が増していますよね! コースが始まった頃から比べて、やっぱり、危機というのが本当に迫って来てるなぁという感じがする。日々暑くなってるし。いろいろな戦争も……
石井:人々も熱くなってね。
湯浅:そういうふうに、思います。
最後は、先生ではなく、湯浅さんが締めくくってくれました。
 
終わりに
 
先生の夢は、大学が教育資源を通じて世界中に「知」の繋がりと再生産を促す Open Educational Resourcesの考え方とリンクするところがあり、UTokyo OCWがEAAと長らく手を取り合うことができた理由の一端を見つけられたように感じました。「知」の共同体のようなものが持つ広く大きな繋がりの中には、もちろん、わたしたちのコンテンツを視聴してくださる皆さまもいらっしゃることでしょう。
そして、新たにコンテンツをご提供くださる先生方のことも、心からお待ちしております。(お問い合わせ方法につきましては、こちらをご参照くださいませ。)
 
〈編集:加藤 なほ,校正校閲:中谷 静乃〉
 
その他 学術フロンティア講義「30年後の世界へ」に携わった UTokyo OCWスタッフ(2024年度に在職中の職員のみ記載,50音順):
佐藤 芙美・蒋 妍・田中 かおり・中谷 静乃・古田 紫乃・村松 陽子・山本 直美
 
おまけとして、スタッフの思い出やメッセージを紹介いたします:
スタッフとして聴講させていただきましたが、先生方の声の温度やそこに乗せられてくる思いや情熱が伝わってくるような気がして、毎回、心から楽しみにしていました。普段、著作権確認でパソコンの画面上でしか伝わってこないものが、liveだと心に沁みる感覚があります。そうした先生方のご講義を、まるで教室で講義を受けているかのような感覚で全世界に届けることができるんだということに、感動とやりがいを感じます。特に印象に残っているのは、羽藤先生の『復興の未来』、岩川先生の『パンデミックを銘記する』の回です。
溝口勝先生『レジリエンスと地域の復興』で、応援団長がエールを送ってくださったのがとても印象的でした。また、どの先生もOCW収録に関する一連の作業に丁寧にご対応いただき、感謝しています。
この授業は、基本的にどのご講義も、学生だけでなく一般の方が聞いても興味深いお話が多いように思います。自分は、撮影業務に集中しているため、その場ではそれほど内容が頭に入ってくることはありませんでしたが、福永真弓先生の『藻と人間』は先生の表現力が素晴らしかったこともあり、お話に引き込まれました。結果、私はプライベートの会食で幾度となく「藻」の話を友人たちに披露しており、最近ではこすり倒して、若干、話が上手くなってきています。
OCWの大ファンだという学生さんと話ができたことが良かったです。
わたしが大学生の頃受けていた講義は、ここまで講師の専門性に大きな幅があるものはなかったように思い出されます。同じ「30年後の世界へ」という命題でも毎年毛色が違うこと、「共生」や「空気」、「希望」といったキーワードにそれぞれの講師が自分の専門分野から切り込んでいくことに学問の多様性や可能性を感じ、また、それを持ち寄ってさまざまな側面からみんなで未来を考えていくことの包含する発展性のようなものを、強く感じました。今年の講義シリーズでは、前半によく取り扱われた復興に関する講義が、どれも心に残りました。自分の視野の狭さを思い知るとともに、また、自分の知らなかった復興への多様な取り組みを知ることで状況が着実に前進しているという安心感、テーマにある希望のようなものが胸に響きました。この講義を多くの人に聞いてもらいたいと、この事業の役割について初心に立ち返る思いがしています。
私は、溝口勝教授の責任感と行動力に深く感銘を受けました。日本の学者の方々と接する機会がある中で、溝口先生の姿勢は特に印象的でした。先生は被災地に対する強い責任感を持ち、小さなことでも率先して行動されています。東京大学の教授という立場でありながら現場に寄り添う姿勢に感動すると同時に、その献身的な取り組みに深い敬意を表します。石井教授のご活動にも大変感銘を受けています。以前、私も先生方にご講義をお願いするイベントを企画したことがあり、その際の調整の難しさを経験しました。今回の撮影を含むイベントでは、さらに多くの行政手続きや調整が必要だったことでしょう。それにも関わらず、石井教授が長年にわたってこのような活動を継続されてきたことに、心から敬服いたします。両教授の献身的な姿勢と、社会貢献への揺るぎない意志に深く感謝すると同時に、大きな励みとなっています。このような素晴らしい先生方と共に活動できることを、心から光栄に思います。
いつも笑顔で話しかけてくださる働き者のEAAスタッフの方々・野澤先生、既に退職されたUTokyo OCW教職員の方々、東京大学出版会の方に、この場をお借りしてお礼と拍手を。皆さまあってこそでした。全ての回がおすすめなので……直感でピンと来たものから、気ままにご自身のペースで、お散歩のように訪ね遊んでみてください!(加藤)
だいふくちゃん通信
はじめに
 
『UTokyo Open Course Ware』では、東京大学で開講された講義のスライド資料や動画を一般公開しており、日頃より多くの方からご視聴いただいています。
わたしたちのウェブサイトは、講義の収録やデータ提供をご快諾くださる、多くの部局および先生方のご協力によって、成り立ってまいりました。
この度、2020〜2024年と連続して『学術フロンティア講義「30年後の世界へ」』シリーズを収録させてくださった東京大学東アジア藝文書院(ひがしあじあ-げいもんしょいん)の現院長、石井剛(いしいつよし)先生に、連携5年目を記念してインタビューいたしました。
 
石井剛先生とUTokyo OCWのマスコットキャラクターだいふくちゃん
 
わたしたちが連携した5年間を改めて振り返ってみると、2020年度、パンデミックの影響によって突如授業が全面オンラインになり、数年後には再び対面授業に戻るなど、技術的なルーティーンを崩され、幾度かの変革を迫られた、少し特殊な期間でもありました。普段、視聴者の皆さまには主に完成したコンテンツだけをお届けしておりますが、この機会に、収録や編集など製作過程の裏側も少しお見せしたいと思います。
このインタビューは、数年にわたって講義収録・ハイブリッド配信を担当したスタッフたちが石井先生を囲む座談会の形で行われました。その内容を、前編・後編にまとめてお届けいたします。
 
このメンバーでお話しました(所属・職位等は2024年7月当時):
石井 剛  大学院総合文化研究科 教授(専門分野:中国哲学),東アジア藝文書院 院長
金子 亮大 東アジア藝文書院 教務補佐員,大学院総合文化研究科 大学院生
湯浅 肇  大学総合教育研究センター 学術専門職員,UTokyo Online Education スタッフ
三野 綾子 UTokyo Online Education スタッフ(2024年8月 退職)
加藤 なほ UTokyo Online Education スタッフ(2024年3月 退職)
 
左から加藤・金子・石井・湯浅・三野(2024年7月19日 駒場キャンパスにて)
 
意外にも、最初は講義の収録・公開に対して「なんだかめんどくさそう、やりたくない」という印象を持っていたという石井先生。そんな先生が、なぜ5年間もの長い間、積極的に取り組んでくださるのか……その謎にも迫ります!
 
前半のお話
 
東アジア藝文書院(以下:EAA)が、わたしたち『UTokyo Open Course Ware(以下:UTokyo OCW)』を知って、講義コンテンツの提供を始めようと思った一番最初のきっかけは、何だったのでしょうか?
湯浅:X(旧Twitter)のEAAのアカウントが、UTokyo OCWのアカウントに「いつかEAAのコンテンツもOCWで公開できますように」とメッセージをくださり、こちらから「では、ぜひお話させてください」とお声がけしたのが発端だったかと。
石井:当時EAAで活躍していた特任助教の前野清太朗(まえのせいたろう)さんがキーパーソンです。わたしは、今回教えてもらうまで、その投稿のことは知りませんでした。彼がいたからこそ始まった、大事な人です。そちらのセンター(東京大学大学総合教育研究センター)の『フューチャーファカルティプログラム(東大FFP)』で学んでいたときから、OCWを知っていて関心があったみたいです。当時、「石井先生、OCWをやってください」って言われて、わたしは「イヤだ」って言ったんです。
皆:(笑)
石井:正直、「講義資料の著作権処理とか、しなきゃいけないのかな」「なんだかめんどくさいな」と思ったものですから。でも、EAAでは若い人がやりたいって言うことを基本的にノーと言わないので、「やってみましょうか」と。明確に声を上げてくれた人がいた、というのがきっかけですね。
 
先生がおっしゃるように、わたしたちは、講師の皆さまからいただいた講義スライドを確認し、使用されている素材について、出典調査および編集処理をしています。講義をOCWのような形式で一般公開する際には、厳格な著作権処理が必要となります。
 
著作物に出典を記載した例(2023年度 第1回より)
 
湯浅:やっぱり、先生方には「負担が増えちゃう」というイメージがあるんでしょうか?
石井:実際に大変だったのは、わたしじゃなくてOCWのスタッフの方々ですよね。基本的に、すごくプロフェッショナルな仕事をしてくださるので、教員側で何か負担が増えるということはあまり無くて、全然めんどくさいことはないですね。もちろん、教員はどういう資料を出すべきか考える必要はありますが、その点さえご自身でコントロールできれば、さほど大変ではないはずです。わたしの場合は、スライドに使う素材として、最初から著作権の上で全く問題ないものだけを選ぶようにしています。
加藤:フィールドワークのように、多くの他者が関わる題材を扱う先生は、大変かもしれませんね。
 
公開時にモザイク処理や許諾申請などをすることも(画像は編集者作成)
 
石井:映画などを題材に授業をなさってる方もいますからね。そして、処理されていないものを提供することにこそ意味があるというタイプの授業もあります。先生方はきっと、「授業を通じて自分の研究を深めていきたい」という強い希望をお持ちなんですよね。だから、なんでもかんでも一般公開向けだと困るわけです。「秘密」って結構大事なんですよ。要するに余白と余剰——それが学問の多様性を保証しているので。キャンパスに集まって、そこで授業をしたり授業を受けたりすることって、やっぱり意味があると思うんです。それは「秘密」が共有できるからです。OCWへの向き・不向きは、その授業の性質にだいぶ左右されるのではないでしょうか。例えば、わたしには1・2年生向けに中国語を教える仕事があるのですが、映り込んだり発言したりする学生たちを守らなければならないし、授業中の雑談っていろんな「秘密」めいたこともいっぱい話しますから。
加藤:他大学で、そういった性質の講義を、作り込んだダイジェスト版として公開するケースがありました。
石井:それは大学のPRとして有効な手段だと思います。やり方次第ですね。この『学術フロンティア講義「30年後の世界へ」』については、わたしがゲスト講師の方々に登壇を依頼する際は、あくまでも教員としてお願いしているので、著作権など細かい事務手続きの説明はしていなくて、毎年、コースの趣旨文を長めに書いてるけれども、それに沿って、参加してもらうことの教育的・学問的な意義を説明して、理解してやってくださる方にお願いしています。ただし、あらかじめ「OCWとして動画コンテンツ化されます」「将来的に書籍にまとめて出版される可能性があります」ということを申し上げておくので、先生方は公開されてもいいように内容をアレンジしてくださっています。
 
それでは、EAAが講義シリーズ『学術フロンティア講義「30年後の世界へ」』を長期にわたってUTokyo OCWに提供してくださっているのは、一般公開と相性がいい講義ということでしょうか? また、単発ではなく長期間継続してOCWに携わることのメリットはなんでしょうか?
石井:この講義は、OCWで積極的に展開していくことによって、授業自体の価値が高まるタイプのものです。「30年後の世界へ」というテーマが続く限り、OCWに収録に入ってもらいたいと思っている、それぐらい欠かせないものになりました。こういうやり方自体、少なくとも教養学部における前期課程向けの授業としては、全く新しい形態です。学生だけでなく、社会に向けても開かれている——「駒場キャンパスでやっている教養教育を、いかに、より大きな社会のリカレント教育と結び付けるか」というチャレンジを、OCWと協力することによって可能にしたのだと思っています。実際にそれをやってしまいましたからね。EAAが標榜する「東アジアからのリベラル・アーツ*」の具体的な実践として、「学術フロンティア講義 × OCW」は、厳然たるひとつの形式になっているわけですよね。
*リベラル・アーツ:一般的には、多角的な視点・批判的思考・さまざまな手法によるアプローチなどを身に付けるため、「文系」「理系」といった枠を超えて幅広い学問領域を横断的(学際的)に学ぶことをさします。
 
撮影と配信が入る教室の様子(2022年度 第11回より)
 
石井:コンテンツ公開と一体になっていることが、ほぼプロジェクトの定義になった——これは、わたしたちEAAの最大の収穫です。以前はそんなふうに思っていませんでしたから。イメージが「変わった」というよりも、「生まれた」というふうに言った方がいいかもしれません。もともとゼロだったものだったのですから。
加藤:ゼロではなくマイナス(笑)
石井:「最初はやりたくなかった」というのはマイナスかもしれませんね。
 
  
石井:このコースでは毎年違うテーマを設定していますが、問い続けること自体、ある種、わたしたちが社会的に前に進んでいくためのエンジンになっていて、長期間OCWを続けることは、利点どころか「それ以外にはない」ということだと思います。教室における当日のレクチャーがあり、その録画を公開すること、そして書籍として出版すること——この三つが連動するという形が、確固たるものとなっています。
加藤:先日の授業で、それらの三つを「(それぞれに)ちょっとずつ違うんですよ」と語っていましたね。
石井:それはシンプルな話で、実際にそれぞれ異なる加工(編集)が入るからです。
 
2022年度の講義を元に刊行された書籍『裂け目に世界をひらく』(詳細はこちら)
 
石井:特に大事なことは、その三つの過程において、講義を担当した先生方の考えが変わっていくことだと思っています。教員は、最初から答えと結論を持って授業に来ているわけではないんですよ。まずは、自分が抱えている問いを——ラフな生のアイディアを、学生さんにぶつけるでしょう? そして、その場で学生さんからリアクションをもらう。その後、OCWでいろいろな編集を経て公開される。さらに、最終的に——といっても本当に最終じゃなくて暫定的な結論として本にするときには、それらを踏まえて改めて書き直します。先生自身が、考えを深め、ちょっとずつ変わるんですよね。すごく面白いじゃないですか。そのような学術生産のプロセスを、あえて一般公開してしまっているんだけれども、それ自体は、実はすごく異例なことだと思います。
金子:先生方が問いと答えを深めて行かれるプロセスに学生が関われるのは、このコースのコンセプトのひとつとして、質疑応答の時間を長く取るからだということがあると思うんですけれども。
石井:そうです。学生さんには「先生方のお話は60分ぐらいで、残り時間は皆さんとのインタラクションです」と伝えてあります。EAAを始めた最初の頃から、「ひとりの教員が教室を支配するのをやめよう」と思っていました。通常、オムニバスの講義だとコース・コーディネーターの先生はあまり出てこないと思うのですが、わたしは全部に出ようと決めています。それで、最初にわたしがレベルが低い変な質問をしてあげると、ハードルが下がって、学生さんたちも質問しやすくなるでしょう? これは、EAAの理念に関わることですが——2019年の創立以来、最初の数年間を引っ張ってくれた中島隆博(なかじまたかひろ)先生が、人間の定義を「Human Being」でなく「Human Co-becoming」だと言うんです。人間は、単独の存在ではなく、誰かと共に変容しながら成長していくというわけです。その人間として当たり前の姿を、ちゃんと具体的に実践して、体現してみせることが大事だと思っています。授業・動画・本というプロセスに学生が入ってくることによって、自動的に「Human Co-becoming」が示されていると思います。
 
中島隆博先生の講義の質疑応答の様子(2023年度 第2回より)
 
OCWは、そのような一連の流れの中でお役に立つことができていたのですね。Co-becomingという意味では、もちろん視聴者の皆さまの存在も共にあるような気がいたします。さて、そのような存在意義の他に、OCWのようなオンライン教育コンテンツの蓄積・公開という活動には、どのような価値があると考えられますか?
三野:例えば、EAAの公式ウェブサイトにも、ブログなど、活動の記録の蓄積がありますよね。一般的に、公式ウェブサイトって、部署の再編や改組などが起きると、伴って無くなってしまったり移管したりということがあるかと思います。アーカイブを(消失の危機から守るために)分散させておいた方がいいのかなって。
石井:もちろん、そういう意味でも意義はありますよね。
金子:OCWの効果って、必ずしも直接的に目に見えてご利益があるかというと、多分そういうわけではなくて。やってみる中で何かいいことがあるかもしれないし、もうちょっと大きな目線で見ると、大学・学問の営みにとっての意義があるとか、あるいは、このように一緒にやっていくやり方そのものが楽しいとか……そういったことを、石井先生は前向きに捉えていらっしゃるんじゃないかと。
石井:EAAの取り組みをなるべく広く人々にお見せして、関心を持ったり批判したりしていただくことが大事なので、より沢山の人が見てくだされば、それだけ効果が大きいということは、一般論として言えますよね。同様に、やっぱり、大学全体として「知的な営み」が持つ意味を社会にアピールする必要も、絶対にあります。オンライン教育コンテンツをその一部として位置付けることは、もっと積極的に考えられて然るべきですよね。現状は、わたしたちEAAのような自主的にやりたい人たちだけがやっているというふうに見えます。
 
  
石井:そもそも、大学がオンライン教育コンテンツを公開する取り組みは、アメリカなどを中心に始まったと思いますので、本来は、英語の講義動画を「やがて我が大学に来てくれるであろう世界中の人たち」に届けるという戦略だったのではないでしょうか。日本の大学の場合、主に日本語でコンテンツを公開する以上、オーディエンスが自ずと限られてくる(英語のコンテンツと比較すると視聴数を稼げない)ので、英語圏のグローバル戦略とは何か違う意図を持たないと、続けていけないですよね。もしも、そこに意味を見出すとするならば——例えば、少なくともわたしたちEAAがやろうとしているのは、一義的には「生活態度としてのリベラル・アーツ」みたいなものを社会に向けて提供していくことですが、当然、そこにはもうちょっと戦略性があって、日本社会の新しいイノベーティブなマインドを日本社会において作り出すことに意味があると考えているんです。大学全体ということになると、EAAがやっている実践レベルとは違うレベルで考えなければいけないでしょう。いろんな可能性があると思いますね。大学としてもっとお金を投入する、もしくは、社会からお金を頂戴するような形にまでなっていくといいと思いますけれども。
 
  
加藤:例えば、以前勤めていた他校では、欧米にバックグラウンドのある先生方で、「わたしはいい授業をやってるから、撮ってどんどん公開してくれ」という人たちが何人もいて。そのマインドは面白いと思うし、マネタイズとは別に、そういう純粋なモチベーションも必要で。個人的には、「理念」だけで支えられている美しいものが残されている世の中であってほしいな、と思っています。
石井:そもそも、マネタイズは「理念」がないと上手くいくはずがないですね。
 
  
石井:わたしは最近、「生活態度としてのリベラル・アーツ」を、SDGs(持続可能な開発目標)の現在ある17項目を牽引する18番目のゴールにするべきだと主張しています。「生活態度としてのリベラル・アーツ」というのは、結局のところ、知的な問いを持ち続ける習慣のことです。わたしたち人類は、問うことをやめてしまえば前に進めなくなってしまうでしょう。イノベーティブなマインドは、問いの立て方に関わってくるはずです。大学が社会に提供するリカレント教育は、世の人々がそういう習慣を育んで生活をより豊かにし、社会全体をよりよい方向に導いていくために行われるべきで、EAAとUTokyo OCWのコラボレーションもそうした試みのひとつですね。
 
後編に続く!
 
今回のお話では、東アジアを拠点に日本語・中国語・英語の3カ国語を使って学術活動する石井先生ならではの着眼点から、貴重なヒントをいただくことができました。日本語のコンテンツの世界的な拡散の難しさはスタッフも痛感しているところですが、それと同時に、母国語で専門的な高等教育を受けることができる日本の学問環境は、世界的にも恵まれており、守られるべきものであるとも感じました。せっかく持っている豊かな教育資源をどのように有効活用していくべきか——わたしたちの今後の課題と言えるでしょう。
次回『わたしたちの「コロナ禍」と「ポスト・コロナ」を振り返る』では、『学術フロンティア講義「30年後の世界へ」』について、5年間の技術の変遷や、授業の内容そのものを振り返ります。引き続き、お楽しみください!
 
〈編集:加藤 なほ,校正校閲:中谷 静乃〉
 
学術フロンティア講義「30年後の世界へ」の動画視聴・スライド資料閲覧はこちらから:
2020年度 「世界」と「人間」の未来を共に考える
2021年度 学問とその“悪”について
2022年度 「共生」を問う
2023年度 空気はいかに価値化されるべきか
2024年度 ポスト2050を希望に変える
 
東アジア藝文書院の活動詳細はこちらから:
東アジア藝文書院|East Asian Academy for New Liberal Arts > 学術フロンティア講義「30年後の世界へ」
 
東京大学の教員・部局の担当職員の方で『UTokyo Online Education』に講義動画・講義資料を掲載することにご興味がある方はこちらから:
UTokyo Online Education > 教材の公開/作成
こんにちは。大学総合教育研究センターUTokyo OCWチームです。
このたび、UTokyo OCWの姉妹サイト『UTokyo OpenCourseWare extra』(UTokyo OCWx)にて公開しているコンテンツの一部をUTokyo OCWにて公開しました。
今回、UTokyo OCWで公開したのは数理・情報教育研究センターが開講している数理・データサイエンスに関する公開講義の18コース。一つの講義がトピックごとに5分〜60分程度と短く分かれており、学び直しや隙間時間での学習がしやすくなっています。
ぜひ、珠玉の講義を自身の学びに活用してください。
複素解析学I
講師:平地健吾教授講義概要:複素関数論は数学の様々な局面で使われるきわめて強力な理論である。本講義では複素数平面、複素関数の微分、複素関数の積分とコーシーの定理といった複素関数論の基礎について解説を行う。
文科系のための線形代数・解析II
講師:藤堂眞治教授・松尾泰教授・藤原毅夫教授講義概要:「文科系のための線形代数・解析I」に引き続き、経済学や統計学、データ科学などにおいて必要とされる線形代数、解析の基礎を学ぶ。線形回帰、二変数関数の微積分、基本的な最適化手法などを理解し、簡単な問題に応用できるようになることを目標とする。講義とMATLABを用いた演習を並行して進めることで実践で役立つ理解を目指す。
確率過程論(数理手法VI)
講師:荻原哲平准教授講義概要:時間とともに変化する不確実な現象を記述し理解するには、確率過程論が重要な道具として用いられる。この講義では数理手法IVに続き、離散時間の確率過程論の講義を行った後、連続時間の確率過程の理論について講義を行う。また、ファイナンスへの応用として、ブラック・ショールズ・マートンによるオプション価格理論を扱う。
文科系のための線形代数・解析I
講師:藤堂眞治教授・松尾泰教授・藤原毅夫教授講義概要: 経済学や統計学、データ科学などにおいて必要とされる線形代数の基礎を学ぶ。二次元・三次元の線形写像と行列、固有値分解などを理解し、簡単な問題に応用できるようになることを目標とする。講義とMATLABを用いた演習を並行して進めることで実践で役立つ理解を目指す。
メディアプログラミング入門
講師:山肩洋子准教授講義概要:「Pythonプログラミング入門」を履修済みの学生、あるいはそれと同等以上のプログラミング力を持っている学生を対象に、時系列データや音、テキスト、画像といった様々なメディアをコンピュータで処理するための基礎的なプログラミングを学ぶ。 拡張ライブラリやWebAPIなどを活用し、実際にプログラムを動かしながらその振る舞いを直感的に学ぶことで、Pythonを使ったメディア処理への理解と興味を深めることを目的とする。
計算機実験I
講師:藤堂眞治教授講義概要: 理論・実験を問わず、学部〜大学院〜で必要とされる現代的かつ普遍的な計算機の素養を身につける。1. 計算機実験のための環境整備 2. 数値計算の基礎 3. 常微分方程式の解法 4. 行列演算とライブラリ 5. 連立方程式の解法 6. 行列の対角化 7. 疎行列に対する反復解法 8. 特異値分解と最小二乗法
最適化手法(数理手法III)
講師:寒野善博教授講義概要:最適化とその応用について講述する。最適化(数理計画)とは、意思決定のための数理手法の一つである。最適化では、与えられた条件を満たす解のうち、ある関数を最小(または最大)にするものを求める。工学における多くの問題が、このような最適化問題として定式化できる。この講義では、最適化におけるいくつかの基本的な問題を取り上げ、それらがもつ性質と解法を説明するとともに、それらの応用を紹介する。
確率論(数理手法IV)※既公開
講師:楠岡成雄特任教授講義概要: 時間とともに変化する不確実な現象を記述し理解するには、確率過程論が重要な道具として用いられる。この講義では離散時間の確率過程に関しての講義を行う。 この講義では、数学的に厳密な議論は行わず、確率過程論(特にマルチンゲール)のアイデアを中心として直観を重視した講義を行う。特に前半では確率空間が有限集合である場合を取り扱う。測度論、積分論の知識は前提としない。
工学のための現代数学入門(数理手法V)
講師:藤原毅夫特任教授講義概要: 理工系の専門分野の学習では、しばしば現代数学の言葉や概念が顔を出す。そのときに困らないためには、新しい概念の在処を知っているだけでも大変役に立つ。本講義では、今後現れるかもしれない現代数学の諸相を、数学非専門の立場から説き起こす。連続と位相・微分形式と多様体上の微積分・群などを扱う。
確率過程論(数理手法VI)
講師:楠岡成雄特任教授講義概要: 時間とともに変化する不確実な現象を記述し理解するには、確率過程論が道具として用いられる。この講義では数理手法IVに続き、連続な確率過程の理論について講義を行う。
時系列解析(数理手法Ⅶ)
講師:北川源四郎特任教授講義概要: 時間とともに変動する現象を記録したデータが時系列である。時系列に基づき、複雑な現象を理解し、予測、制御や意思決定を行うための方法が時系列解析である。この講義では、時系列のモデリングのための前処理や特徴の可視化、統計的モデリングの方法、線形・定常時系列モデル、状態空間モデルおよび非線形・非ガウス型モデルについて、実際の問題への応用含めつつモデリングの方法を中心に解説し、現実の問題に対応して適切なモデリングができるようになることを目標とする。
データ駆動科学の数理(数理手法Ⅷ)
講師:島田尚准教授講義概要: 主に経済・社会系に関する最近の data-driven な研究を紹介し、それらを理解するための数理手法を解説する。研究を進めるのに重要なこれらの数理手法の理解の糸口になるよう講義をする立場で努力する。
時系列解析(数理手法Ⅶ)
講師:松尾宇泰教授講義概要: 方程式の求解や、微分・積分などの計算は、手計算の形でこれまで十分経験していることと思う。しかし、天気予報、航空機の設計、物理現象のシミュレーションなど実際的な場面で必要とされる計算は、大規模かつ複雑で手計算ではとても実行できない。このような場合に使われるのが計算機を使った数値計算である。これは大変強力な方法であるが限界もあり、その性質をわきまえずに使うと思わぬ大怪我をする可能性もある。本講義では数値計算の方法と性質について、実用面に留意しながら解説する。本講義の履修には計算機プログラミングができることが望ましい。
統計データ解析I
講師:小池祐太准教授講義概要: ビッグデータの時代と言われている。近年、データの計測およびストレージ技術の発達とともに、大規模データから適切に情報抽出し、それを意思決定に活用することが必須のリテラシーとなっている。いっぽうデータの形式と対応する解析法の変化は著しく、新しい方法を正しく利用するために、普遍的な統計科学の原理を理解することが重要である。基礎となる統計数理とともに、具体的な統計解析手法とその運用を、統計ソフトウエアによるデータ解析実習を通じて習得する。
統計データ解析II
講師:小池祐太准教授講義概要: 統計データ解析Ⅱでは、統計ソフトウエアRの説明の後、高次元大規模データに潜む相関構造を発見し計量する多変量解析、および時系列データの基本的な解析法を学ぶ。統計手法の運用とデータハンドリングを実習することに加え、微分積分学、線型代数学等の前期課程数学と連携し、数理科学的側面を意識しながら、実験を介して統計手法の合理性と体系を感得する。
コンピュータシステム概論
講師:小林克志特任准教授講義概要: コンピュータシステムを利用した情報サービスの知識はあらゆる分野で求められている。 本講義では、情報サービスの提供に必要な知識・スキルに加えてそれらの獲得方法を学ぶ。 具体的には、Web サービスの提供を想定し、その実現に必要な知識・技術を解説する。 併せて、具体的なサービス構築を通じ知識・技術の活用に加え、それらの獲得方法を実践的に体得する。 課題発表の時間に学生が設計・構築したサービスのデモをおこない、学生同士で評価する。
データマイニング入門
講師:森純一郎准教授講義概要: ビックデータ分析技術は情報処理技術を学ぶ上で重要となっている。本講義では、データ分析・データマイニングの基礎について学ぶとともに演習を通して実際にデータを分析するプロセスを学ぶ。特に、前期課程の「データマイニング入門」講義のさらに発展的な内容を学習することで、後期課程や大学院におけるデータサイエンス、人工知能、機械学習、自然言語処理などの関連講義の基礎となる知識を習得することを目標とする。
Special Lecture at Utokyo "Linear Algebra"
講師:Professor Gilbert Strang (MIT)
Online Education
大学総合教育研究センターTL推進部門では、UTokyo Online Educationの魅力を伝えるためのチラシとポスターを制作しました。複数のオンライン教育サービスを運営しているUTokyo Online Educationのそれぞれのサービスの違いや魅力が一目で分かるチラシになっています。ぜひお手にとってご覧ください。
また、チラシやポスターの設置に協力いただけるパートナーを探しています。私たちの取り組みに共感し、協力いただける教育機関・公共機関・法人企業の担当者の方は下記のアドレスより連絡いただけますと幸いです。
UTokyo Online Educationの魅力が分かるチラシの配布場所
UTokyo Online Educationでは、3つのサービスを展開しています。
●『東大TV』: 東京大学で開催された講演会・公開講座・オープンキャンパス・ワークショップなどイベントの様子を公開!公式Youtubeチャンネルも開設しており、登録者12万人を超える人気チャンネルです。
●『UTokyo OCW』: 東京大学の学生・大学院生が実際に受講している正規授業の資料・収録動画を公開!公開している講義数は1500を超え、各分野の第一線で活躍している研究者の講義を見ることができます。
●『UTokyo MOOC』: 東京大学が世界の学習者に向けて制作している大規模公開オンライン講座。講義資料、動画に加えて、クイズ、ピア・レビュー、ディスカッションフォーラム、Final Exam(最終テスト)といった要素で構成され、世界中の学習者と共に学びを深めることができます。
上記の3つのサービスを合わせて、3000を超えるコンテンツを横断して一括で検索できるのが本サイト『UTokyo Online Education』です。
また、東大TVとUTokyo OCWは2025年にサービス開始から20年を迎えます。これまで積み上げてきた豊富なライブラリーは、あなたの学びの在り方を変えます。20年の歴史と共に歩んできたUTokyo Online Educationで、知の冒険に出かけましょう。あなたの新たな学びが、ここから始まります。
UTokyo Online Educationの3つのサービスの魅力を多くの方に周知するために、以下の場所でチラシを配布しています。
配布場所・東京大学総合図書館、駒場図書館、柏図書館、その他一部の附属図書館・生協書籍部(本郷、駒場、農学部)・東京大学コミュニケーションセンター・HASEKO-KUMA HALL・Dining Lab 食堂コマニ・その他関係協力機関
UTokyo Online Education チラシ(表)
UTokyo Online Education チラシ(裏)
UTokyo Online Educationポスター
広報物設置の協力のお願い
東京大学の叡智を多くの方々に届けるため、ぜひ皆さまのご協力をお願いいたします。私たちの取り組みに共感し、広報の協力をしていただける方を心よりお待ちしております。あなたの協力が、誰かの人生を変えるきっかけになるかもしれません。
下記のリンクよりPDFデータをダウンロードできます。
A4サイズチラシ[PDF(A4×2頁)]
A2サイズポスター[PDF(A2)]
UTokyo Online Educationでは、チラシやポスターの設置にご協力いただけるパートナーを探しています。チラシやポスターの紙媒体の設置に協力いただける教育機関・公共機関・法人企業に向けて、広報物を送付いたします。
下記の必要情報を添えて、件名に【チラシ・ポスター設置】と明記し、『oeアットマークhe.u-tokyo.ac.jp』まで連絡をください。(アットマークを@に変換してください)追って、担当者より連絡させていただきます。
①組織名②郵便番号③送付先住所④受け取り先(担当者・部署など)⑤電話番号⑥設置いただける部数-チラシ:枚-ポスター:枚
※ご入力いただいた個人情報は、チラシ発送業務の為に利用し、第三者に提供することはございません。
UTokyo Online Educationで、知の冒険に出かけましょう。あなたの学びが、ここから始まります。
Online Education
さて、コラム「オンライン教育コンテンツってなぁに?」では、オンライン教育コンテンツ(以下:OER)とは、基本的に誰であっても無償で自由にアクセス・利用できる形式で提供されていることを紹介しました。
しかし、急に「誰でも自由に使っていいよ」と言われても……。「見てみたいけど、どんなふうに使ったらいいのか、ピンと来ない」という方に向けて、このコラムでは、OERの具体的な使用方法を紹介します!
後半では、東大発のOER「UTokyo Online Education」へのアクセスのしかたなどを詳しく説明します!
(※OERとそれを取り巻く環境は社会情勢や技術とともに変容を続けており、特に、提供元の方針・プラットフォームやサービスの形態・Webサイトのビジュアルなどは、コラム執筆時と異なっている可能性があります。必要に応じて最新情報をご確認ください。)
OERを利用するメリットとは?
OERを取り入れた学習にはメリットがいっぱいです!どんな点が優れているのでしょうか?
1. ほとんど無料!
OERの「O」は、「Open」の頭文字です。その名の通り、オープンアクセスの資料は、一般にインターネット上で無償で提供されています。閲覧する費用が掛かりません。
2. アクセスしやすい
インターネット環境さえ整っていれば、ご自身が持っているデバイス(パソコン・タブレット・スマートフォンなど)から検索して、気軽にアクセスすることができます。
皆さんは、スマートフォンでYouTubeの動画を見たり、パソコンでラジオ講座や教育テレビのアーカイブをご覧になったことはあるでしょうか。OERの講義動画は、それらと同じような感覚で視聴できます。
3. 自分のペースで勉強できる
OERでの自主学習は、学校や塾などのカリキュラムが準備されている学習と違い、誰かから指図されて行うものではありません。自分の興味関心に従って、自分のペースで自由に学習することができます。
学習スタイルは、あなたの自由。しっかり机に向かい、まとまった時間を取って学習することもできます。通勤・通学の移動時間や隙間時間に少しずつ進めることもできます。
どんな人が、どんな使い方をできる?
実際にOCW(Open Course Ware)やMOOC(Massive Open Online Courses)などには、どんな人に、どのような使い道があるか、具体的な例をいくつか挙げます。ご自身のケースに当てはまる方法・実践できそうな方法などを取り入れてみてください。
受験・進学の参考に
受験生のみなさんは、進学先を検討するとき、どうしていらっしゃるでしょうか。
現在所属している学校・学習塾で進路指導を受けたり。各大学が発行するパンフレットを参考にしたり。または、オープンキャンパスに参加したりするのが一般的ですね。
実は、東大TV、OCWやMOOCを見るのもおすすめですよ!
もしも、みなさんが実際にオープンキャンパスに訪れるとしたら。教室の人数制限もありますし、同じ時間帯にいくつもの模擬講義や説明会が開催されていますから、1日中キャンパスに滞在していても、「全ての」授業を見ることは難しいでしょう。また、遠方に住んでいて、実際に行くのが難しいという人もいるでしょう。そんなとき、東大TVのようなプラットフォームでオープンキャンパスの動画が公開されていたら、ぜひ、見逃した模擬講義や説明会を視聴しましょう!
また、OCW(Open Course Ware)では、その大学に所属している学生が実際に受けた講義が公開されています。「どんな学問分野があるのかな」「どんな先生がいるのかな」「中学や高校の授業との雰囲気の違いは?」「ついていけそうかな」パンフレットやシラバスだけでは分からない教室の雰囲気をつかむことができるでしょう。
また、オープンキャンパスで授業を受けて「もっとこの先生の授業を受けてみたい」と思った先生や、「この分野について詳しく知りたい」と思った分野の動画を、OCWで探すのも良いでしょう。
マサチューセッツ工科大学(MIT)では、学生にアンケートを取ると、入学前にOCWを視聴して進路選択の参考にしたという人の割合がとても高かったようです。
履修・進路の検討に
OCWは、既にその大学に所属している学生にとっても役立つものです。今後履修する授業や、進む分野を検討する材料として役立ちます。
大学によっては、入学時に決まった所属がなく、途中からそれぞれの専門分野に進むカリキュラムを取り入れている大学があります。1・2年次のうちに興味のある分野や関心がある先生の授業を見て、希望する進学先の雰囲気をつかんでおくと良いでしょう。
また、大学院の授業が公開されている場合、大学院進学の際の検討材料になるでしょう。
実際に、当オフィスの学生サポーターで、「UTokyo OCWで見た講義動画を参考に、憧れの先生のゼミに入った」という人がいました。
予習・復習に
多くの場合、大学では同タイトルのコースや類似した内容のコースが、毎年度くり返し開講されています。履修予定のコースを事前に確認しておいたり、過去に受けた講義を繰り返し視聴したり。予習・復習に利用することで、より授業への理解が深まります。
生涯学習・趣味の学び・学びの補足に
現在、特定の教育機関に所属していない方(所属する機会がなかった人、あるいは既に卒業している人など)で、独自に学習を進めたいと思っている場合、OERは自分の好きなタイミングで簡単に始めることができるので、とてもおすすめです!
そして、すでに大学・大学院など特定の教育機関に所属している人にも。履修している科目とは別に学びたいことがある場合、OERが役立つかもしれません。学習している範囲の補強を行ったり、専攻と関係なく興味のある分野を開拓したり。
具体的には、次のような例が考えられます。
「履修はできないが興味がある」という講義の動画を視聴する。
自分の専門に隣接した分野のコースを試聴する。
文系で大学に入学したが、入学後に理系の専攻に進むことになったため、苦手な数学の補習として、数学の授業の動画を視聴する。
業務でWebページの作成をすることになったため、Webデザインのコースを視聴する。
時代小説を読むことが趣味なので、最新の日本史や国文学の講義を参考にして、より読書を楽しめるようにする。
実際に、UTokyo OCWで「だいふくちゃん通信」を書いた学生サポーターのみなさんから、「まだまだ知らない講義がたくさんあって勉強になった」「卒業前に取るチャンスがない講義を見る機会になって良かった」といった声をいただいています。
語学学習に
母国語でない言語で開講されている講義の動画を、言語の学習の教材として役立てることができます。
例えば、英語で開講された授業の動画を視聴して、入試・検定試験の対策として、英語のリスニング力を強化するという使い方をしている人もいます。
自身の研究分野の授業を英語で理解して英語で論文を執筆したり、国際的な場で発表やディスカッションに参加したりする際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
レポート・プレゼン資料で引用できる
OERは、一定の条件下において再利用が可能です。つまり、自分のレポートやプレゼン資料においてOERを引用することができます。
ご自身の授業の教材に
先生方は、ご自身の授業の教材の一部として利用することができます。
実際に、とある先生や学生さんから、下記のように使用されたという話を聞きました。
「OCWで、このコースのこの回の動画を見て、レポートを書いてください」という宿題を出す。
OCWで、昨年開講したコースの動画を視聴する宿題を出し、次の回では動画の内容について議論をする、または詳しく説明を加えるといった反転授業(Flipped-Classroom)の形式を取る。
授業の中で動画を再生して一部を見せたり、画像やデータをスライド上で引用したりする。
教員が自分の教材をOERにする
ご自身の講義を公式に記録として残すことができます。講義を振り返る材料としたり、自己紹介やキャリア紹介に業績として記載することができます。
OERを利用する際の注意点
OERというのは、必ずしも動画とセットというわけではありません。
元来、OCWはシラバス・講義資料・講義ノートなどを公開することを主目的として始まりました。現在では、多くの場合、OCWの主要なコンテンツとして動画が付いていますが、資料のみが掲載されているページも多く存在します。
利用条件に注意しましょう
OERをご自身の教材やプレゼンテーションに引用したい人は、ご注意ください。
OERは、「パブリックドメイン」に属しているか、もしくは「オープンライセンス」のもとで公開されています。オープンライセンスには、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが多く用いられます。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスにはいくつかの段階があり、その素材に付与されているライセンスの種類によって許される利用方法の範囲が異なります。引用や再配布に際して、出典情報の記載など、個別によく確認しましょう。
  ☞パブリック・ドメイン, クリイティブコモンズとは?|utelecon
東京大学のOERを見てみよう!
さて、具体的なイメージがつかめたところで、実際に東京大学が提供するOERのWebサイトにアクセスしてみましょう!
この記事を見ながら、ぜひ、ご自分で実際にWebサイトを操作して、OERコンテンツの探索を楽しんでください。
UTokyo OCW
まずは、OCWについて詳しく紹介します。下記のリンクをクリックするか、Web上で「UTokyo OCW」で検索してください。
  UTokyo OCW:https://ocw.u-tokyo.ac.jp/
UTokyo OCWのマスコット「だいふくちゃん」です
ヘッダーメニュー「講義を探す」から、絞り込みの方法を選ぶことができます。
進学先を検討している方には、「学部・大学院から探す/分野から探す」を選択することをおすすめします。学部や専攻ごとに検索することができます。
オープンキャンパスで授業を受けたり、OCWで講義動画を見て、「もっとこの先生の授業を見てみたい」と思ったら、「講師から探す」を利用すると良いでしょう。教員名をクリックすると、その先生が担当した授業の一覧が開きます。ただし、お探しの教員名のボタンが存在しない場合、またはページ内検索でヒットしない場合は、UTokyo OCWでは未収録です。ご了承ください。また、既に離任・退職している方も含まれていますので、進学先を検討する際にはよくご確認ください。
受講する授業の検討や予復習に役立てたい場合は、「コース一覧から探す」を見ましょう。( 学期を通して開講される複数回の授業の連なりをコースと呼びます。)
トップページには、
多くアクセスがあった講義
新着講義
検索数の多いキーワード
などが表示されています。それらのおすすめ情報から、ここ最近注目が高まっているホットなトピックを確認したり、自分の興味関心に合わせてランダムに視聴するのもよいでしょう。
また、「だいふくちゃん通信」は、東京大学・大学院の在学生や卒業生がおすすめする講義動画について、紹介・説明・感想などを綴ったコラム記事です。各自の専門分野や興味関心、時事問題などから講義動画を選んでおり、記事そのものが読み応えある内容となっています。ぜひ、ご一読ください。
東大TV
次に、東大TVを見てみましょう!東大TVでは、授業ひとコマ分が収録されているUTokyo OCWに比べ、1本1本の動画が1時間以内の短いものがたくさんあります。
下記のリンクをクリックするか、Web上で「東大TV」で検索してください。
  東大TV:https://tv.he.u-tokyo.ac.jp/
東大TVのマスコット「ぴぴり」です
トップ画面から、分野や講師名などの分類を頼りに動画を検索する方法は、UTokyo OCWと全く同じです。東大TVでは「講義」ではなく、講演会や模擬授業の1つ1つを「イベント」と呼んでいます。
「人気の動画」では、アクセス数の多い動画・最近アクセス数が多くなってきている動画などを掲載しています。まずは、そこから興味深い動画を見てみるのも良いでしょう。最近話題になっているトピックや社会問題などについて、疑問に思っていたことや、もっと詳しく知りたいと思っていたことの答えが、見つかるかもしれません。
東大TVには、小学生・中学生・高校生が楽しめるコンテンツが多く掲載されています。例えば、2015年度に工学部が主催した「工学部 テクノサイエンスカフェ 第21回 宇宙へ飛び出そう!」では、元宇宙飛行士の方のお話を聞いたり、子どもたちがワークショップに参加したりする様子が収録されています。
「タグから探す」の「中高校生向け」「小学生向け」「オープンキャンパス」などのタグから、10代の方々でも楽しめる動画を見つけることができます。
「特集」では、「ぴぴりのイチ推し!」と題して、同じく学生サポーターがおすすめ講義を紹介する記事を掲載しています。
UTokyo MOOC
2023年現在、東京大学がコースを提供しているプラットフォームは、edXとCourseraの2箇所です。
edXの東京大学のページ:https://www.edx.org/school/utokyox
Courseraの東京大学のページ:https://www.coursera.org/utokyo
東京大学が現在どのようなコースを提供しているか知りたい場合は、下記ページをご覧いただくと、素早く一望することができます。
  大規模オンライン公開講座(MOOC):https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/society/visit-lectures/mooc.html
トップページのメニューから、「講座を探す」をクリックします。
分野やプラットフォームから絞り込みをする機能があります。
ここでは、例として「教育」を選択して、検索してみました。その結果、1件、「Coursera」で受講できる講座があることが分かります。
受講したい人は、「Courseraで受講する」をクリックしましょう。
edXやCourseraでは、コンテンツを閲覧するためには、事前に初期登録をする必要があります。まずはアカウントを作成しましょう。
いずれのプラットフォームにおいても、下記のような特色があります。
プラットフォームそのものへの登録(アカウント作成)は無料です。
コースは英語で提供されています。
履修登録開始のボタンを押したからといって、必ずしも期間中に修了しなければならないわけではありません。課題を提出せずに資料としてコンテンツのみを閲覧するという活用も可能です。設定された開講期間後であっても、コンテンツが公開されている限りは閲覧可能です。
東京大学のコースに限定せず、様々なコースを検索したいという方。MOOCには、edXとCousera以外にも様々なプラットフォームが存在します。それぞれのプラットフォームのホーム画面から検索しましょう。多くのプラットフォームは国際的なものであるため、英語でのコースが主流です。日本語で提供されているコースをお探しの場合は、JMOOCなど、日本語に特化したプラットフォームをご覧になることをおすすめします。
  JMOOCの詳細:https://www.jmooc.jp/about/
UTokyo OEで横断検索!
さてさて。今まで紹介したような、東京大学が提供するOERのコンテンツを、サービスの垣根を超えて横断的に検索できるのが、このサイト「UTokyo Online Education」です。
  UTokyo Online Education:https://oe.he.u-tokyo.ac.jp/
トップ画面からキーワードなどを元に絞り込み検索をすることができます。ぜひご活用ください。
〈執筆協力:中條 麟太郎・竹村 直也(学生サポーター)〉
Online Education
みなさん、こんにちは。UTokyo OE(UTokyo Online Education)スタッフです。
さて、「東京大学が公開するオンライン教育コンテンツ = UTokyo Online Educationのコンテンツを横断検索することができる」というのが、当サイトの役割です。
しかし、そもそもオンライン教育コンテンツとはどういうものなのでしょうか?
まず、皆さんも今やすっかり馴染んだ「オンライン教育」。2020年の新型コロナウイルス感染拡大を受けて、世界中で急速に普及しました。テレビ会議システムを用いたオンライン授業、録画されたオンデマンド授業などは、その一例です。同じ教室にいなくても、遠隔で、講義資料の共有やディスカッションが行われます。
しかし、今ほどの認知度や重要性はなかったものの、「遠隔教育」の歴史は、実は古いのです。通信教育やラジオ教育などを使って遠くに教育を届ける工夫は、19世紀ごろから存在していました。
そして、ICT技術を活用した教育のオンライン化を発展させようという運動も、1990年代にインターネットが始まって以降、ずっと存在しています。特に2000年代以降、欧米を中心に、様々な試みが活発に行われてきました。その代表例として、Moodleなどの学習管理システム(LMS)やオンライン教材の開発・利用が挙げられます。
さて、このコラムでは、そのような取り組みの中でも、UTokyo Online Educaitionのように、誰もが自由にアクセス・利用できる「オープン教育資源(OER:Open Education Resources)」を紹介したいと思います。
(※ OERとそれを取り巻く環境は社会情勢や技術とともに変容を続けており、特に提供元の方針・プラットフォームやサービスの形態・Webサイトのビジュアルなどは執筆時と異なっている可能性があります。必要に応じてご自身で最新情報をご確認ください。)
Open Educational Resources(OER)とは?
OERの定義
UNESCO(ユネスコ、国際連合教育科学文化機関)は、「Open Educational Resources」(以下:OER)を次のように定義しています。
オープン教育資源(OER)とは、パブリック・ドメインとなった、又はオープンライセンスの下で公開されている著作権のあるあらゆる形式及び媒体の学習、教育及び研究の資料であって、他の者による無料のアクセス、再使用、別の目的のための再利用、改訂及び再配布を認めるものをいう。
オープンライセンスとは、著作権者の知的所有権を尊重し、並びに公衆に教材を再使用し、別の目的のために再利用し、改訂し、及び再配布し、並びに教材にアクセスする権利を付与する許可を与えるライセンスをいう。
情報通信技術(ICT)は、OERへの効果的、衡平な及び包摂的なアクセス並びにOERの使用、改訂及び再配布にとって多大な可能性を提供する。ICTは、OERが全ての者(障害者及び疎外された集団又は不利な立場にある集団の個人を含む。)にとって、時及び場所のいかんを問わずアクセス可能なものとなる可能性をもたらし得る。ICTは、個々の学習者のニーズを満たし、及びジェンダー平等を効果的に促進することを助長し、並びに革新的な教育学的、教訓的、及び方法論的な取組を奨励し得る。
この勧告における学校部門、ノンフォーマル部門及び(適当な場合には)インフォーマル部門における利害関係者には、教員、教育者、学習者、政府機関、父母、教育の提供者及び教育機関、教育支援要員、教員研修指導者、教育政策立案者、文化施設(図書館、公文書館、博物館等)及びその利用者、情報通信技術(ICT)基盤の提供者、研究者、研究機関、市民社会組織(職業団体及び学生団体を含む。)、出版業者、公的及び民間部門、政府間機関、著作権者及び著作者、メディア団体及び放送団体並びに資金供与団体を含む。
引用:UNESCO「Recommendation on Open Educational Resources (OER)|オープン教育資源(OER)に関する勧告(文部科学省による仮訳)」より「1. Definition and Scope|1 定義及び適用範囲」(2019年)
つまりOERってどういうもの?
ちょっと、ややこしいですね。
簡単にまとめると、OERとは、「より多くの人が無償でアクセス・利用・改変して再利用もできるように共有された教育資源」のことをさします。ここでいう「教育資源」とは、一般的に想起される教科書や参考書だけでなく、講義そのものの動画・シラバス・スライド資料・研究結果のデータなど、教育・学習の材料となるあらゆるものが該当します。
OERが出現する前は、講義や、そこで配布される講義資料は、多くの場合、特定機関の構成員に限定的に共有されることが前提となっていました。分かりやすく言うと、例えば、「東京大学のA教授が開講している授業を受けることや、教室で配布するプリントを手に入れることができるのは、東京大学に所属してA教授の授業を履修している人だけ」というのが当たり前でした。
しかし、A教授が、それらの資料をOERとしてWeb上で一般公開したら……? 他大学の学生でも、また、たとえ子どもや社会人でも、入院治療中の人でも、遠く離れた外国にいる人でも、誰もが(インターネット環境さえあれば)いつでも無償で閲覧することが可能となるのです。
また、OERは、ただ受講者として閲覧して学習するだけでなく、基本的には改訂や再配布が認められているため、自分の発表学習の一部に引用したり、他の教員が自分の授業の教材の一部として活用することも可能です。
このように、世界中に向けて「知」を開放することは、収入・年齢・障害の有無・学習環境など、様々な要因で教育へのアクセスが困難な人々に学習のチャンスを提供する役割を果たしています。それだけではなく、さらに、持続的に多くの人々に「知」が共有され、それらが循環することによって、新たな「知」を生むことにも繋がっていくでしょう。
そして、UNESCOが4番目の項目で言及しているように、これらの教育資源を広く世界に行き渡らせる手段として、Webサイトや学習管理システム(LMS)などのプラットフォームはもちろん、インターネットなどの通信技術の存在が欠かせません。
オンライン教育の需要が世界的に高まった昨今、OERは、ますますの普及と発展が期待される分野といえるでしょう。
大学がOERを提供する理由とは?
歴史的な経緯
高等教育機関の1つである大学がOERを公開する活動は、2000年前後から始まりました。特に、2001年にマサチューセッツ工科大学(以下MITと呼ぶ)が「MIT OpenCourseWare」を始めたことが、大きなきっかけとなりました。MITで開講されているコースの講義動画・講義資料・講義情報などを、Webサイトで大々的に公開し始めたのです。
90年代にコンピューターが普及し始めた頃から、教員や研究者が、個人でブログやWebサイトを作成して、自作の教材を無償公開することは一般的に行われていました。OCW(Open Course Ware)は、「大学が主体となって、公式に教材提供のプラットフォームを用意する」という点で大変画期的でした。
このような取り組みが、アメリカ合衆国、やがては世界中に広まりました。日本では、2005年以降、いくつかの主要な大学が賛同して、実施を開始しました。(参照:https://oejapan.org/history)
どんな目的や意義があるの?
「学費を払って学校に所属している学生」以外の人たちに授業を見せることについては、当然、疑問の声が上がったり、議論になったりすることがあります。
OERの公開は、どちかというと、実利的な面よりも、大学の指針やミッションなどと照らして、「知の開放と共有」「教育格差の是正」など、高い理念の側面から発足しています。MITでは、大学のミッションと合致していたため、OCWの立ち上げは自然に受け入れられたそうです。
大学には、授業料を支払う学生に高度な教育を施して優秀な卒業生を社会に送り出すという機能があります。しかし、大学は、学びを提供する場であると同時に、研究機関でもあり、資料・人材の宝庫でもあります。そのような場から、結集された高度な知を機関の外に開放・共有する)という新しい形で、社会に貢献する、と考えることもできるでしょう。
そこで多くの場合、これらの取り組みは、基本的には非営利で運営されています。(一部、持続的な運営に必要な資金を、寄附金や少額の収益によって得ている事業や大学もあります。)
東大のオンライン教育コンテンツを紹介します
東京大学もまた、積極的にOERを提供しています。当サイトで横断検索できる3つの教育コンテンツ、
UTokyo OCW
東大TV
UTokyo MOOC
について、それぞれのアクセス方法や特色を紹介します。
UTokyo OCW
そもそも、OCWとは何でしょうか?
OCWは、Open Course Ware(オープンコースウェア)の略称。大学や大学院が提供する講義と、関連する情報や資料をインターネット上で無償で公開する活動です。多くは、講義動画やスライドなどの授業資料を閲覧できるWebサイトの形を取ります。
オープンエデュケーションコンソーシアムでは「a free and open digital publication of high quality college and university‐level educational materials.(大学レベルの上質な教材をデジタルで無償公開したもの)」と定義されており、日本ではオープンエデュケーション・ジャパンが「大学や大学院などの高等教育機関で正規に提供された教材」と定義しています。
先の章でも紹介したように、米国のMITで最初に考案されて始まった取り組みであり、現在では世界中の様々な大学がOCWを提供しています。日本国内では、現在、10を超える主要な大学がオープンエデュケーション・ジャパン(旧・日本オープンコースウェアコンソーシアム)に加盟しています。(2023年現在)
インターネット上で、「興味のある大学の名前」+「opencourseware/ocw」を入力して検索してみると良いでしょう。オープンエデュケーション・ジャパンに加盟していない大学でもOCWまたはそれに近い形で、講義動画の公開を実施しているところがあるため、検索してみてください。
では、ここで東京大学のOCWを紹介します。
  UTokyo OCW:https://ocw.u-tokyo.ac.jp/about/
このコラムを読んでいる方々の中には、すでにご覧くださっている方もたくさんいらっしゃるかもしれません。
東京大学もオープンエデュケーション・ジャパンに加盟しており、日本国内では比較的早い時期からOCWの公開をスタートさせました。理系・文系を問わず、幅広い分野のコンテンツを豊かに有しています。
UTokyo OCWは、完全にオープンなWebサイトの形を取っています。したがって、閲覧するためには、アカウントを作成して会員登録する必要はなく、ログインを求められることはありません。もちろん視聴料を払う必要もありません。全てのページ・全ての動画や資料に、自由にアクセスすることができます。
東京大学の正規の講義(当該教育機関に籍を置く学生が単位を取得するために履修するコース)を公開しています。多くのコースは10回〜13回の授業で構成されています。学期を通して1つの事柄を学ぶ性質のコースもあれば、オムニバス形式のものもあります。1本の動画の長さは90〜120分程度と、比較的長めです。
専門性の高いものから、分かりやすい入門編のようなものまで、普段、現役東大生が受講している授業とほぼ同じ内容を存分に楽しむことができます。(※著作権や肖像権保護の観点から、動画や資料には部分的な削除などの編集を施しています、ご了承ください。)
講義を検索する際は、分野ごと・講師ごと・人気順などの分類に従って、条件を絞って探すことができます。
また、「だいふくちゃん通信」では、東京大学の学生が執筆した講義の紹介ブログ記事を読むことができます。視聴する動画を選ぶ際など、ぜひ参考にしてください。
東大TV
OCWの他に、もうひとつ「東大TV」というWebサイトがあります。
  東大TV:https://tv.he.u-tokyo.ac.jp/
東大TVでは、正規講義に当たらない、オープンキャンパス・高校生向けに実施されている「高校生と大学生のための金曜特別講座」・ワークショップ・シンポジウム・特別講演・外部講師による講義などを公開しています。著名人の講演会なども豊富にあり、正規の授業とはまた一味違う、多彩な内容です。
OCW同様、会員登録等の手続きを求めないオープンなWebサイトの形式をとっています。一部に、東京大学の構成員(教職員・学生など)のみがアクセス可能な、学内の説明会・研修の動画などを含んでいます。
多くは、複数授業の連なりからなるコースの形式ではなく1回ごとに完結する単発の講義です。動画の長さはまちまちで10〜30分など短いものも存在します。
また、「ぴぴりのイチ推し!」でも「だいふくちゃん通信」同様、東京大学の学生が執筆した講義の紹介ブログ記事を連載しています。
UTokyo MOOC
まずは、MOOCについて説明します。
MOOCとは、Massive Open Online Course(大規模公開オンライン講座)の略称で、インターネット上で誰でも受講できるコース(講座)の総称です。一般的に「ムーク」と発音され、複数のコースを表して「MOOCs(ムークス)」と表記する場合もあります。
2003年にOCWが誕生した後、新たなオープンエデュケーションの形として2008〜2012年頃に仕組みが整備され、正式に発足しました。
MOOCは、様々なプラットフォームにて提供されています。例えば、スタンフォード大学の教員によって立ち上げられたCoursera(コーセラ)や、ハーバード大学・マサチューセッツ大学が合同で立ち上げたedX(エデックス)、英国のオープン大学が立ち上げたFuture Learn、その他、Udemy、Schooなど様々なプラットフォームがあります。
これらのプラットフォームにて、大学をはじめとする様々な機関がコースを提供しており、その分野は、学術的な専門知識を得られるものから、IT・マーケティング・語学などビジネススキルに特化したものまで多岐に渡ります。海外の有名大学や一流企業が実施する本格的な授業を受けられることが魅力の一つです。
オープンエデュケーションの理念に基づいており、インターネット環境とデバイスさえあれば誰でも学習する機会が与えられているところ、自分の興味関心に沿って自由にコンテンツを選択できるところが、OCWと共通しています。
しかし、下記のように、OCWとは異なる特徴も備えています。
登録制であること:プラットフォームアカウントを作成してプラットフォームにログインし、受講したいコースに登録します。
講座を受講するスタイルであること:OCWでは、自分で自由に(ランダムに)授業を選出・閲覧して学習します。MOOCでは、オンラインでの学習の全てが完了することを念頭に、 学習者が集中しやすい10-15分の長さの講義動画と視聴後の知識を試すクイズで構成されています。修了までの目安となる大まかなスケジュールと週ごとに学習に取り組む目安の時間が設定されています。
オンライン学習専用に制作されていること:MOOCの動画はドキュメンタリータッチの高度な編集が施されているものが多く、対面授業を撮影して配信するタイプのオンデマンド素材とは異なる特徴を持っています。
自分の他にも同じ講座を受講している学習者がいること:場合によっては、同時期に受講している学習者たちとの議論・交流の場であるディスカッションフォーラムや、課題に対して講師や他の学習者からのフィードバックをもらえるピア・レビューの機能を備えており、他者とコミュニケーションを取る機会があります。
有償のコンテンツが存在すること:OCW同様、MOOCも教育格差是正の理念に基づいて始まっているため、基本的には無償で受講できるコースが大半ですが、一部有償提供のものが存在します。
修了という概念があること:一定の成績を収めて合格(修了)した場合、CourseraやedXでは、希望すると(有料で)修了証を発行してもらうことが可能です。就職活動や進学の際、他の資格試験の結果などと同様に、自身の強みとしてアピールすることは可能でしょう。
一部の大学では、 MOOC講座の修了証獲得を卒業単位として換算しているところがあります。
完全に単独・独自で学習するよりも、
他の学習者たちの存在を感じて、協力したり議論したりしながら学習したい人
課題への取り組みや成績評価を受けることを通じて、知識の定着を確認したい人
修了証を取得するなど、学習の達成を形に残したい人
は、MOOCのコースを受講することを検討すると良いのではないでしょうか。
上記で紹介した主要なプラットフォームのほとんどは、アメリカ・イギリス・オーストラリアなど英語圏の国の私企業が事業として展開しているので、英語がメインとなります(多言語字幕がつく講座もあります)。「英語での受講や議論への参加はハードルが高いなぁ」と感じる方は、まず、日本の大学や機関のみがコースを提供するプラットフォームであるJMOOC(ジェイムーク)を検討してみてください!
さて、東京大学もMOOCにコースを提供しています。
東京大学は、日本初の試みとして2013年に開講し、現在までにCouseraとedXのという米国発のプラットフォーム上に、27の講座を提供しています。
  UTokyo MOOC:https://mooc.he.u-tokyo.ac.jp/ja
建築・宇宙・日本文学・コンピューターグラフィックなど様々な分野で、それぞれの第一線の先生方による講義が提供されています。オンライン学習専用に高度に編集された質の高い動画・資料が掲載されています。ぜひ、ご活用ください。
それぞれのサービスの活用方法
より詳細な閲覧方法・活用の方法については、このサイトの別のコラム「オンライン教育コンテンツってどうやって利用するの?」で紹介します!
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
〈執筆協力:中條 麟太郎・竹村 直也(学生サポーター)〉
Online Education
みなさん、こんにちは。UTokyo OE(UTokyo Online Education)スタッフです。
UTokyo OE(Online Education)が提供するウェブサイト「UTokyo OCW」「東大TV」では、東京大学で公開された講義やイベントの動画・講義資料などを、数多く公開しています。
見たい動画を探す際には、ウェブサイトのトップから、興味のある学問分野や講師の名前によって検索することができます。
「そうは言われても、あまりに多くの動画があってどれから見たらいいか分からないよ!」という方にオススメの、コラム記事のコーナーがあります。
コラム記事は、東京大学の現役学生サポーター・卒業生・スタッフなどが持ち回りで執筆しており、講義動画の概要を紹介したり、執筆者が講義動画を見た感想・自身の体験談などを綴っています。
執筆するトピックは、執筆者の専攻・得意分野に基づいている場合もあれば、ご本人の純粋な興味関心・驚き・感動などから選んでいる場合も。
東京大学を、より身近に感じていただくことができる内容となっております。
「UTokyo OCW」の「だいふくちゃん通信」では、2021年から、学生サポーターの協力を得る現在のスタイルを取り入れました。
約2年間で既に100本程度の記事を公開し、SNSなどで好評をいただいております。
そして、この度、「東大TV」の方でも、同じ執筆チームによるコラムの連載を始めることになりました。
題して、「ぴぴりのイチ推し!」です。
これらのコラムを
・見る動画を選ぶ際の導入として・ひとつの読み物として・動画を視聴する際のヒントとして
みなさまの日々の学習にご活用いただけましたら、執筆者一同、大変うれしく思います。
UTokyo OCW「だいふくちゃん通信」
「UTokyo OCW」には、「だいふくちゃん」というマスコットキャラクターがいます。とても可愛らしい姿に、スタッフたちからも溺愛されております。お見知り置きを。
〇お名前:だいふくちゃん
〇お誕生日:2月9日
〇役職:広報部長
〇ストーリー:立派なふくろうになるべく、いろいろなことを勉強中。OCWめがねを拾ったことをきっかけにUTokyo OCWと出会い、その面白さにはまってしまいUTokyo OCWのスタッフのお部屋へやってきた。
スタッフも、へぇ、そうなんだ……と忘れている情報が多かったですが、改めて記憶に刻みたいと思います。
さて、我らが広報部長のお名前を冠した「だいふくちゃん通信」と、そのアクセス方法を紹介します。
「UTokyo OCW」では、東京大学が開講する正規講義(所属する学生が履修して単位をもらう通常の授業)を取り扱っています。実際に学生・大学院生が受講している授業をご覧になりたい方、ぜひご活用ください。
まずは、「UTokyo OCW」にアクセスしましょう。
そして、画面上部のメニュー「だいふくちゃん通信/特集」からプルダウンして、「だいふくちゃん通信」を選択してください。記事一覧が表示されます。
とはいえ、「記事もたくさんあってどれから読んだらいいか分からない!」という方は、ぜひ、こちらのページを。
●【2022年度を振り返る!】だいふくちゃん通信ライターが紹介する人気記事(2023/08/23)
●【2023年最も読まれた記事はどれ!?】2023年だいふくちゃん通信アクセス数ランキング(2023/12/26)
学生ライターさんが、2022年、2023年にたくさん読まれた人気記事をランキング形式にまとめ、おすすめコメントとともに紹介してくれました!
東大TV「ぴぴりのイチ推し!」
「東大TV」にも、「ぴぴり」というマスコットキャラクターがいます。
ゆるキャラの王道を行くだいふくちゃんのフォルムとは、また違ったおもむき。そして、既存の生き物とも違う独創的な姿(学生サポーターさんから「鳥?」と言われていましたが、空想上の生き物のようです。)
こちらも、負けず劣らず可愛がられています。
〇お名前:ぴぴり|Pipili(公募によって決まりました)
〇発見日:2016年6月1日
だいふくちゃんは「お誕生日」が判明していますが、ぴぴりは「発見された日」とのことで……それぞれにいろんなドラマがありそうですね。
「東大TV」で扱っているのは、東京大学で開催されるオープンキャンパス・公開講座・著名な方をゲストに迎えた講演会など、多彩な内容です。YouTubeチャンネルとしては、登録者数11万人を超える大人気コンテンツとなっております。
こころなしか、ぴぴりの顔が誇らしげに見えます。
だいふくちゃんも、お友だちの晴れ舞台なので、よろこんでお手伝いしました。
さて、こんなに人気があり、多様で豊かなコンテンツを持つサイトですから、さらに多くのみなさんに知ってもらいたいと考え、(「UTokyo OCW」と同様に)講義やイベントをピックアップして、コラム形式で紹介することになりました。
ぴぴりが、頭のてっぺんのアンテナからみなさんに発信する、「ぴぴりのイチ推し!」です。
「東大TV」にアクセスの上、「特集」からアクセスしてください。
もちろん、ぴぴりちゃんは心の中では全ての講義を「推し」ていますよ!しかし、なにぶんたくさんのコンテンツがありますので、みなさんの動画視聴のきっかけのひとつとして参考にしていただけるよう、どんどん連載していきたいと思います。
これからも応援をよろしくお願いします!
コラムの更新情報は、公式Twitter・Facebookでも配信しています。
Twitter
UTokyo OCW(@UTokyo_OCW)
東大TV (@UTokyoTV)
Facebook
UTokyo OCW
東大TV
記事を読んでお気に召していただけましたら、ぜひ、感想などを付けて拡散してください。みなさまのご声援が、学生ライターの励みとなっています。
そして、Twitterでは、だいふくちゃんとぴぴりがお仕事したり遊んだりしている姿も、ときどき登場しますよ!
2人がイラストになって登場する栞(しおり)もご好評をいただいており、引き続き、東京大学本郷キャンパスの「コミュニケーションセンター」(東京大学本郷キャンパス赤門から入ってすぐ横です)・生協・図書館などで配布中です。
横断検索サイトだから、「横断歩道」を渡っております。
4枚集めると、「あの有名な横断歩道」にそっくりな横断歩道が完成します。
ぜひ、入手してください!
大変好評で、すでに30,000枚近く配布されているのですが、在庫が無い場合もございます。あらかじめご了承ください。(みなさんがしおりに出会えることを祈っています。)
それでは、引き続き、UTokyo OEをお楽しみくださいませ。
Online Education
UTokyo Online Educationのしおりを無料配布中!
こんにちは。UTokyo Online Educationスタッフです。
このたび、UTokyo Online Educationの取り組みを紹介するしおりを作成しました。
本サイトを筆頭に、UTokyo OCW、東大TV、UTokyo MOOCのロゴ・マスコットキャラクターをあしらった栞となっています。
ぜひ、お手に取ってみてください。
栞の配布場所
現在、東京大学コミュニケーションセンター(本郷キャンパス内)にて配布中です。
東京大学コミュニケーションセンターは、大学の研究成果を活用した商品や、大学にゆかりのあるモチーフをデザインした様々な商品を販売しているショップです。
他の場所でも配布を予定しています。配布場所が決定しましたら、追ってお知らせします。
※栞は配布予定数量に達し次第終了する場合があります。
Online Education
UTokyo Online Educationでコンテンツを探す方法をご紹介します。
トップページから検索する
トップページではコンテンツの簡易検索ができます。
「キーワード」、「分野」、「講師の所属」のうち、選択できるのはどれか1つのみです。複数選択をしたい場合は「→もっと詳しく探す」をクリックしてください。
詳細検索ページから検索する
詳細検索ページの使い方はこちらをご覧ください。
メニューの「詳細検索」から飛んだ場合には、「検索条件を変更する」というボタンしか表示されていない場合があります。
この場合は、「検索条件を変更する」のボタンをクリックしていただくと、検索条件を指定する画面が表示されます。
おすすめナビゲーションから探す
トップページには下記のような検索画面もあります。
それぞれのボタンをクリックすると、条件に合ったコンテンツが表示されます。